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教える者が、教えられた日

「噺家渡世の余生な噺」 第12回

三、正直者と、そうでない者

数年に一度、決まって現れる。

非協力で小生意気な生徒たち
――たいていは徒党を組んだ連中だ。
そういう者に限って、目立つ役を欲しがる。

私は、宣言通り、希望の役を与えなかった。

中には、
「親がPTAをやっている」だの、
「うちの親は学校に言う」だの、
ずいぶんと立派な“後ろ盾”を持ち出す者もいた。

だが私は、単年契約の講師に過ぎない。
守るべき椅子もなければ、失う立場もない。
だからこう言った。

「それなら、ぜひ親御さんに報告してください。
なぜその役を与えられなかったのか。
あなたの将来のために、
日頃の態度も含めて私からもお話しします」

結局、誰一人として連絡はなかった。

報告しなかったのではない。
できなかったのだろう。
自分の言動を、いちばんよく理解しているのは、
他ならぬ本人なのだから。

四、終わりの知らせ

ある年のゼミ最終日。

担当教員から、次年度の契約更新は行わないと告げられた。
理由は、
「次年度からは、習熟度別の教科ゼミに移行するため」。

まあ、そういうこともある。
始まりがあれば、終わりもある。

それよりも、ひとつだけ釘を刺された。
――このことは、生徒にはまだ未公表。他言無用。

例年であれば、
継続希望の生徒とともに、道具を整理し、
次年度に備えて保管依頼をする。

だが私は、その年に限って、
ほとんどの物品を処分することにした。
次年度以降に続くことは、もうない。

積極的に協力してくれていた生徒に、
その処分を頼んだ。

しばらくして処分から戻ってきた生徒が、こう言った。
「先生、あんなに捨てて、来年度は大丈夫なんですか?」

その瞬間、胸の奥で何かがひっくり返った。
「あっ、いけね!」

私は、次年度を楽しみにしているその生徒に、
その“未来”を、自分の手で捨てさせてしまったのだ。

咄嗟に口が動いた。
「次年度からは、一新します!」
生徒たちは、無邪気に喜んだ。
「やったー!」と。