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教える者が、教えられた日

「噺家渡世の余生な噺」 第12回

七、余生の補習

それでも、ひとつだけ、消えない引っ掛かりがある。

実は、もしあの担当教員からの
「次年度からのゼミは、選択教科での習熟度別ゼミになります」
という言葉が、
「古典芸能ゼミ」打ち切りのための断り口上
――つまり嘘だったのだとしたら、
どれほど今の私が救われるだろうか、と考えることがある。

だが、それは違う。
嘘は、つくものだけではない。
つかせることもまた、誰かに後悔を生ませる。
誰かの立場や事情が、別の誰かに嘘を選ばせる。

だから今でも、ふと思う。
「正直に答えてください」
あれほど言っておきながら、最後にいちばん答えを濁したのは
――私だった。

どうやらこのゼミは、
私に心の成長をさせるために、
最後の最後に、
私にだけ“余生の補習”を残して、終わったことにしてくれたらしい。

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