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教える者が、教えられた日

「噺家渡世の余生な噺」 第12回

五、確かめる術

その日、彼らは、いつものように言った。
「先生、また来年も!」

私は、いつものように笑顔で手を振った。
――来年は、ない。

「嘘や誤魔化しはやめてください。正直に答えてください」

あれは、誰に向けて言った言葉だったのか。
十年の最後に、私は自分で掲げた言葉を
あっさりと裏切った。

「正直者が報われる世界を願っています」

その正直者に、
私は何をさせてしまったのか。

いまでも、ときどき思う。
あの生徒たちは、あの時どう思ったのだろうか。
それとも新年度には、
そんなことはもうとっくに忘れてしまっていたのだろうか。

“マナーと秩序”を乱した私に、確かめる術は、もうない。

六、教えるということ

思い返せば、
自分も学生の頃、教師に誤魔化されたことがある。

だが、その教師を恨んだことはない。
むしろ、
「ああ、大人でも嘘をつくのだ」と、
妙に納得しただけだった。

だから、あの生徒たちも、
きっとどこかで理解してくれている
――そう思いたい気持ちが、どこかにある。
情けない話だが……。

「この講座で、心の成長を願っています」

あの言葉は、
結局、誰に向けたものだったのか。

生徒ではなかったのかもしれない。
十年かけて、いちばん成長したのは、
あるいはいちばん恥をかいたのは
――私だったのだろう。

人に何かを教えるというのは、
立派なことのように見えるが、
その実、
自分の未熟さを、
何度も思い知らされるものでもある。