旅の話

「お恐れながら申し上げます」 第11回

噺家泣かせのホテル

 海士町での公演は、無事に終わりました。夕ご飯も美味しくいただきました。島のホテルに空きが少なく、3組に分かれて泊まることになりました。噺家チームはおしゃれなホテルに泊めていただくことに。

 広いお部屋にバスルームも清潔で、何より窓から見える景色がとてもきれいなところでした。ところが、部屋にテレビがありません。どこを探しても、というよりは探す場所がないほどシンプルな部屋。試しに引き出しを開けてみましたが、そんな所にテレビが入るはずもなく。

 ホテルの情報を調べてみると、世間から切り離された特別な空間というコンセプトのようです。噺家にとっては致命的なコンセプトです。こういう時に文明の発展に感謝します。スマートフォンがあってよかった! ホテルを散策していると、ロビーや踊り場でパソコンやスマートフォンを使っている人が多くいました。コンセプトに疑問を抱いたのは言うまでもありません。

 翌日は高速船に乗って、隠岐島の島後(どうご)の隠岐の島町に向かいました。会場をチェックした後に水若酢(みずわかす)神社と資料館を見学させていただき、お昼には美味しいお刺身とづけ丼をいただきました。公演が終わった後、ホテルに向かったのですが、その日のホテルは部屋にシャワーがありません。1階にある温泉に入ってほしいとのこと。その温泉も宿の方が毎朝、ほかの所から運んで来ているようです。ただ、景色はとてもよかったです。

 自然の中で温泉を楽しんでほしいという気持ちは分かりますが、部屋にシャワーがないのは、朝起きるのが苦手な我々にとっては痛手です。島根に戻って泊まったビジネスホテルが何とも快適でした。もちろん、隠岐島のホテルは観光で泊まる分には、たまらなく素敵なホテルだったと思います。朝ごはんも美味しいし、景色はきれいだし、日々の喧騒を忘れさせてくれる特別な空間でした。

 ところが、我々は仕事で来ているのです。日常の延長線にいる私たちに、世間と隔離された空間など必要ありません。当たり前のビジネスホテルでいいんです。むしろ、当たり前のビジネスホテルがいいのです!

 こんなことを書いてますが、仕事で全国各地の色々な所に行けるのは幸せなことです。「色々と手配をしてもらっているのに、わがままを言いやがって」と仰る方、まったくその通りです。申し訳ございませんでした。