NEW

一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回

一人が紡ぐ物語

いちか 例えば、名優の故・日下武史(くさかたけし)さんは、あの四季独特の発声法でも不自然さはまったくないんですよ。セリフ術の頂点を極めた方だと思います。永遠の憧れです。

 私はそもそも文章や本を読んでいるのがなにより好きで、美しい文章を人間という身体を通して表出するということに熱中して青春時代を過ごしたと言いますか。なので、いわゆる現代的な会話劇よりも、どちらかというと哲学や概念を現す長いセリフ技術の研究に夢中になっていました。

 そのうちに、今度はある劇団に出会いまして、そこが芥川龍之介とか太宰治とか、主に昭和初期の小説を俳優が地の文からセリフからすべて一人でやる「モノドラマ」というのをやっていたんです。「キンダースペース」という劇団なのですが、同じ事務所で仲の良かった女性が「すごく面白いものを見つけたの」って。

 それで一緒に観に行ったのですが、俳優一人が抽象的なセットの舞台に立って、冒頭からある時は地の文、ある時は登場人物のセリフと、一人で全部をやるんです。多少、内容は舞台用に編集してはいるんですけど、それが非常に面白くてですね、林芙美子(はやしふみこ)の短編小説を一人でドラマにしたり、「これは面白い!」と思って、ワークショップを開いているということを知って、それに参加したんです。

いちか その開催場所が川口で、短い作品に挑んでいきましょうというワークショップを見に行ったら、そこに師匠となる(田辺)一邑がいました。以前からワークショップに参加していたんです。

いちか どちらかというと、一人芝居ですね。完全に俳優が覚えて身体に入れたものをお芝居として表現するので。

いちか すごく面白いんですよ!