一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/07/14
ただ者ではない存在感
―― 表現者として考え続けていかなくてはならないテーマであると思いますが、いちかさんもそうした考えをテーマに持ち続けてきたんですね。
いちか 所属していた劇団からも、とにかく「外側で絶対に演技をするな」とも言われ続けてきましたから。
ここで挙げた、いちかによる朗読とは、NHK-FMで2026年5月4日から6月26日まで全40回で放送された『朗読の世界』という番組で臨んだ、葉室麟(はむろりん)作の時代小説『川あかり』のことである。
一人の臆病(おくびょう)武士が藩から密命を受け、思いを寄せる人のためにも、自分の弱さを断ち切ろうと旅に出る。その旅の途中、川留めに遭い、木賃宿(きちんやど)に泊まることになるが、そこで訳ありの旅人と交流することになり……というストーリーである。講談の武芸物や世話物ともまた異なる、田辺いちかの話芸が光っている。

―― そうした中、そのワークショップで一邑先生と出会ったわけですね。
いちか 何者だろうと思って(笑)。いろいろな人のセリフをどんどん読んでいくんですけど、ある人が口にしたセリフのあとを取って、すぐに次の人のセリフを取っていくという話芸の独特の間ですよね。それを非常に楽な感じで、でも的確で。
いい声ですし、常にニコニコした女性で、この人だけはただ者ではないなと思って(笑)。そうしたら講談をやっていると聞いて「講談って、どんな芸なんですか」「歴史の話」「え、歴史好きです」って。
―― おっと! いちかさんによる話芸の独特な間が出ましたね(笑)。それまで講談という芸を知っていたんですか。
いちか まったく知りませんでした。
次回の〈中編〉では、田辺いちかが師匠となる田辺一邑への弟子入りを決意した瞬間や、まるでプロポーズのようだった入門秘話、そして田辺派に受け継がれる「人と同じことをしていてはダメ」「古典と新作は両輪」という教えに迫ります。さらに寄席で講談を15分に凝縮する名人芸から学ぶ工夫や、真打に昇進した今も磨き続ける芸への探究心まで。講釈師・田辺いちかの原点と未来が見えてくる〈中編〉をぜひお楽しみに!
(文中、敬称略)

▼田辺いちか(講談協会 公式ホームページ)
▼田辺いちか オフィシャルサイト
▼田辺いちか X
(中編に続く)
次回(中編)はこちら
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―― 瀧口雅仁『釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編』連載一覧
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