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一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回

山の上の読書生活

いちか 私は、声に出す文章が好きだったんです。幼少期に一番愛読していたのは、シェイクスピアのセリフが集められた名セリフ集です。文字だったら絵本でも何でも読んでいたんです。子どもの頃の誕生日プレゼントは本でしたし、とにかく本を読んでいられれば幸せで、グリム童話や日本文学でも何でもです。

いちか そうですよね。私は山の上にポツンと立っているような家に住んでいたので、友だちと遊ぶよりも、家で本を読んでいるというような子どもでした。

いちか 本当に、山の上に『ポツンと一軒家』だったんですよ。私は家の中で本を読み、弟は山で遊んでいる(笑)。その中でもシェイクスピアがとても好きでした。翻訳者も福田恒存(ふくだつねあり)さんのものが好きでした。

いちか その硬い文体が好きで、高校時代とかはそれを読んで一人でブツブツと。

いちか それがまた好きなんです! いかにも文学的で、三島由紀夫の戯曲も好きでした。

いちか はい、最高です!(笑)。ただし、あれが難しいのは、現代小説になってくると耳で聴くようにはできていないので、特に人間が入れ替わり立ち代わり出てくると、声を変えなければならないんです。

 私はあまり声を変えるのが器用な方ではなく、声を変えるより芝居を変えることで表現できれば、と思っています。ただ聴いている人にはできるだけわかりやすくお伝えしないといけないので、そこの塩梅が……。講談よりさらに声を変えなければならないので、苦労しました。

いちか 聴いている人が不愉快に感じない程度の匙加減(さじかげん)での声の変え方は、私にとって以前からのテーマでもあるんです。もちろん、これは受け取る人の感覚によって感想が違ってくるので、自然と現代の最大公約数を目指すことになりますが……。