一途に講談を生きる 田辺いちか(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第42回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/07/15
打ち上げで明かした本心
田辺一邑に関しては、当ウェブでも以前にインタビューをしたので、こちらをご参照願いたい。昭和の釈界で活躍した“ヒゲの一鶴”こと、田辺一鶴(たなべいっかく)の弟子で、以下に挙がる古典講談のほか、出身の浜松ゆかりの人物を取り上げた『フジヤマのトビウオ古橋廣之進(ふるはしひろのしん)』『山葉寅楠(やまはとらくす)オルガンを直す』といった自作の新作にも取り組んでいる。
では、いちかは一邑の元に入門して、何を学び、何を感じたのか。そのあたりに迫ってみた。
―― 弟子入りを決めるタイミングでの一邑先生のこの一席というのはありますか。
いちか 『良弁杉(りょうべんすぎ)』と『湯水の行水』です。どっちが先だったかは定かではありませんが、この二席で、特に印象に残っているのが『湯水の行水』でした。
―― いちかさんも読まれる話ですね。
いちか 最初はすごい笑えるのに、いきなり武士の男同士の友情のようなものに変わっていく。それを小柄で可愛らしい女性が読まれて、頭の中でその世界を描くことができることに感動してしまって。九州出身なので、特に任侠心あふれる、語らずとも伝わる男同士みたいな話が好きということもあって(笑)、これを女性ができるなんて、と思ったんです。
―― それで「弟子にしてください」とお願いをした……。
いちか それがですね、メディアセブンでも講談のワークショップが開かれたり、台本が渡されて順番にやってみましょうというイベントで、何度もメディアセブンに行くようになって、スタッフさんとも顔見知りになった頃、「打ち上げに参加しませんか?」と誘っていただいたんです。その時、(神田)こなぎ姉さんがいたのを覚えているんですが、当時二ツ目の(瀧川)鯉八兄さんや(三遊亭)小笑兄さんもいた気もします。
スタッフさんから「弟子入りしたいんじゃないんですか?」って言われてしまって、「あ、思っていたことを先に言われた!」って。でもそこで「いいえ」というのも変ですし、「実は、はい、お願いに上がりたいと思っていまして」と、その場で口にしたら、こなぎ姉さんが「ああ~」って(笑)。

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