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一途に講談を生きる 田辺いちか(中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第42回

プロポーズのような弟子入り

いちか その時は「あら~」という感じだったんですが、ただ私がその時、まだ声優事務所と別の劇団にも所属していまして、弟子入りの前に劇団に説明して辞めなければならない。その時ちょうど、その劇団が……そこは新宿のSPACE107という劇場付きの団体だったのですが、劇場が建て替えられる、ついては最後の公演を打とうということになったんです。

 私は、劇団が持っている大きな家でシェアハウスもして、家族のような存在でもあったので、これは最後にご奉公しなければということで、「最後の公演は出ます」と。公演が終わってから弟子入り志願しようと決めまして。一邑もその公演に来てくれました。

 そうして全部終わったあとにお電話をして、「実は、お話が……」と話したら、一邑も薄々わかっていたのか、「は、はい」という感じで、場所を指定してもらったのが、上野広小路の今半。モジモジしながら「弟子にしていただきたいのですが」、一邑もはにかみながら「はい」って、お見合いかプロポーズみたいな感じでした(笑)。

いちか まったくです(笑)。「最近の楽屋回りの細かいことはわからないから、梅湯(現・宝井琴凌)さんとこなぎさんに聞いて」って言われて、お二人もやさしいですし、必要なことを教えてくださって、失敗するとそっと直してくださって。なので萎縮することもなく、一邑も「いろいろあるだろうけど、講談やっている人に本当に悪人はいないから、何を言われてもそんなに気にすることなく、頑張んなさい」といった感じでした。

いちか はい。私が入門した時に七回忌でしたから。

いちか 最初の間は言われませんでしたが、「人と同じことをしていてはダメだよ」ということを徐々に聞くようになっていきました。

 あとは一鶴の教えで、「古典と新作は両輪であるから、自分でも作れなければいけない」。一邑も一から話を作りますし、古典に関しても自分で編集を繰り返しています。それは私も勉強になりますし、最初に教わった『三方ヶ原』にしても、「ここはカットしよう」って(笑)、読み物として編集しています。

 話に関しても何か台本をもらうというよりは、「速記本などから編集して、自分でやりなさい。前座の時から作りなさい」と言われました。