情熱に出会い、魂を語る 神田紅(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第44回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/08/09
華やかさの裏にある覚悟
―― 私が常々思うのは、とは言え、“女性だからよかったという点もあるのでは?”ということなんですが、そういうことはありませんでしたか。
紅 それなりに綺麗だったことでしょうか?(笑)。
―― 若い頃の写真もお綺麗ですし、今は可愛らしくもあります(笑)。
紅 ありがとうございます(笑)。うちの師匠は女性でも弟子に取らなかったことがあるんです。今はルッキズムだと言われる時代でふさわしくないお話かもしれませんが、フェミニストであった師匠が、弟子入り希望の女性を、私に遠回しに断ってほしいと言ってきたことがあります。
見てくれにこだわっていたのか、若い頃に女遊びを散々してきた人なので、見抜く力と言えばよいのか、あの時代は綺麗でないと生き残っていけない。それが第一にあって、その子は、芸界に向かないと感じたようなんです。
私の上の世代では、師匠が育てた天の夕づるさんも芸の中から出てくる色気がありました。それを考えると、今の時代は綺麗でなくても、何か特徴があって、個性が活きる時代になったと思います。
講釈師神田紅の半生については、『神田紅の語って紅伝』(西日本新聞社)、『神田紅 女の独り立ち』(産経新聞出版)、さらに近著の『紅流 女講談師として生きて』(クラウドブックス)で知ることができる。
筆者は“女流”という表記を用いないことにしているのだが、紅の著を読めば、男性中心の封建制の強い講談界において、“女性であること”がいろいろと言われていた時代を経て、現在のように活躍めざましい女性講釈師がどのようにその位置を占めるようになったのかを知ることができる。
―― この3月に、長く務めていらっしゃった日本講談協会の会長を降りられました。今のご心境をお聞かせください。
紅 ほっとしています。実は今年(2026年)の2月28日にドバイにいたんですが、イランの戦争に巻き込まれて、泊まっていたホテルの前に迎撃されたミサイルのデブリ(破片)が落ちて爆発炎上し、一週間ドバイに留め置かれたんです。
命の保証もないですし、いつイランから弾が飛んでくるかもわからない。言葉もほとんど通じないですし、そんな中、ホテルも変わらなくてはならないという、明日もわからない状況にあったんです。
日本政府のチャーター機で3月8日に帰国して、すぐに5月上席の新宿末廣亭での(雷門)助六師匠主任の住吉踊りの稽古に入らねばならず、相当ストレスがたまっていたのか、ドッと疲れが出て、5月上席は何とか務めたのですが、その後、咳喘息になって。そこからは咳との戦いで、声も出なくなって、寄席も代演してもらいました。会長を降りていて、本当に良かったと思いました。
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