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教える者が、教えられた日

「噺家渡世の余生な噺」 第12回

教える者が、教えられた日

今年4月の「浅草午歳五人男」での一枚。同じ昭和53年生まれの岡大介さんと

柳家 小志ん

執筆者

柳家 小志ん

執筆者プロフィール

一、古典芸能ゼミという場所

新年度を迎えるたびに、
決まって思い出す出来事がある。

以前、十年ほど、ある私立高校でゼミ講師を務めていた。
その名も「古典芸能ゼミ」。
れっきとした授業である。

私の落語指導を軸に、着物の着付けや礼儀作法、
さらには本業の芸人を講師として招いた講習
――講談、浪曲、紙切り、寄席囃子、太神楽、手品、歌舞伎、舞踊。
いささか欲張りではあったが、
我ながら、ずいぶんと贅沢なゼミだったと思っている。

年度末の全校ゼミ成果発表会では、
毎年フィナーレ(主任:トリ)を任された。
演者だけでなく、高座返しや囃子、裏方に至るまで、
すべてを生徒たちで担わせる。
まるで一席の寄席を、丸ごと拵えるようなものだった。

会場は、とある区立の文化センター大ホール。
私ですら本業で一度しか立ったことのない舞台に、
三年続けて高座に上がった生徒もいる。

その光景に心を動かされた在校生が、
翌年にこのゼミを希望する。
そうして、静かに循環が生まれていた。

二、最初に言ったこと

新年度、ゼミ初日のオリエンテーションで、
私は決まって、こう言った。

「本当に古典芸能を極めてもらおうとは思っていません。
この講座の中で、心の成長を願っています」

「ルールは決めません。
マナーと秩序は、皆さん自身で決めてください」

「嘘や誤魔化しはやめてください。
私も同じ道を歩んできています。すぐに分かります」

「非協力の者には役は与えません。
いいとこ取りは許しません。
正直者が報われる世界を願っています」

少々、青臭い。
だが、あの頃の私は、本気でそう信じていた。