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一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回

一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)

田辺いちか 近影(向じま墨亭にて)

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

吹き替えで磨いた話術

 どんな世界も次の世代を支え得る実力者が登場しないと続いてはいかない。一時期、東西合わせて30人に足りなかった講談界が、昨今、隆盛を迎えているのは、当時の第一線にいた講釈師の活躍もさることながら、その世界に憧れて門を叩き、やがて実力を高座で見せていった若手の存在があったからとも言えよう。

 今年、新たに真打に昇進する実力派講釈師がいる。講談ばかりでなく、話芸に親しんでいる人で、その名前を知らない人はいないだろう。

 この秋に一枚看板を掲げる田辺いちかにたっぷりと話を聞いてみた。

いちか 私は田舎者で、講談のことはまったく知らないで大人になりましたが、演劇を長くやっていまして……。

いちか はい、そうです。舞台に立っていました。ずっと舞台で生きていたい、とはいえご飯も食べなければならないので、声優事務所に入ろうと、いろいろな事務所のオーディションを受けました。

 その時、ある事務所のオーディションの時に渡されたセリフの題材がフランス演劇の長ゼリフで、ほかの声優事務所とまったく違ったんです。その長ゼリフが非常に面白い! 「この事務所がいい!」と一目惚れで、合格したのでそこに入りました。外国映画の吹き替えのかたわら、フランス演劇を手掛けるという事務所でした。

いちか 中国へ行って戻ってきてからなので、10年はやっていました。

いちか 所属した事務所が吹き替えの声優事務所でもあったのですが、吹き替えというのは、口パクに合わせる『人間の自然なセリフらしさ』と、“ながら見”している人にでもわかるよう『自然ではない状況説明』をいかに両立させるか、という技術が必要なのです。その獲得のために翻訳劇の複雑で詩的な長ゼリフ術を学ぼう、というのがその事務所の方針でした。

 主催の村松さんは劇団四季の第一期研究生ですから、題材は初期の劇団四季のストレートプレイ(セリフ劇)、ジャン・アヌイやジャン・ジロドゥのものが中心で、これらのフランス演劇を日本語で具現化するためのメソッドを長年研究されていた方なので、教えは非常に理論的で明確でわかりやすく、大きな学びになりました。