食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶
シリーズ「思い出の味」 第11回
- 落語
桂 笑金
2025/08/17
己を貫く究極の芸
色々なことを優しくも厳しくもユニークに教えていただく日々でしたが、二年が経った時、師匠との別れが訪れました。それは突然で、心の底から悲しかったです。
悲しんだのは、もちろん私だけではありません。皆から愛されていた師匠だったので、ものすごく大勢の方がお通夜、お葬式に駆け付け悲しみに暮れました。
しかし、師匠は死んでもなお、悲しんでいる我々を、そのキャラクターで明るくしました。ここにも食が絡んできます。
まずサイズの合う棺桶がなく、特注で作らないといけないので、お通夜の日が伸びました。そして、師匠が好きだったものを各々が棺桶に入れたのですが、その内容というのが、竹の皮で包まれた高級なお肉、大きなケーキ、ポテトチップスなどのお菓子、コーラなどなど多種多様の食べ物でした。棺桶の中で、師匠はたくさんの食べ物に包まれておりました。
会場には、ベルトコンベアのような機械仕掛けで棺桶を霊柩車へ直接運ぶというものが本来あったのですが、大きな師匠と大量の食べ物のあまりの重さにベルトコンベアでは運べず、急遽人力に変更。このアナウンスで会場の人々は爆笑。
私を含め、一門の人間たちが大勢で歯を食いしばりながら必死に運び、この様子を見た人々は輪をかけるようにまた爆笑。
そして骨上げの時、大師匠(六代 桂文枝)が「これは何や?」と骨ではない何かをつまみながら言いました。すると、横にいた師匠のお母様が「ケンタッキーです」。
私は膝から崩れ落ちました。悲しさの中に繰り広げられたウソみたいな可笑しな会話。悲しむ余裕を与えてくれない。お葬式の中でこのような場面を作り出した師匠に私は感動しました。
お葬式という設定で、まるで一世一代の芸を見せてくれているような、唯一無二のお葬式。たくさん食べる太ったキャラクターを最後の最後まで命をかけて貫き、周りを明るく笑顔にさせる。これぞ究極の芸だと感じました。
この師匠の『食』と『芸』から私は、芸道に己を貫く姿勢を学びました。食にも芸にもハングリー精神を持っていた師匠を見習い、少しでも師匠に近づけるように、師匠の言葉を思い出します。
そして、今では絶対に塩タンはタレにつけないように食べています。あの塩とタレの混ざった味は忘れません。
毎年、一門の師匠方、お兄様方と師匠を偲んで焼肉に行かせていただいております。焼き方も師匠の教え通りに一番美味しい状態に持っていくことを心掛けております。
焼肉は落語。お肉の味とともに、当時の日々を、師匠の教えを噛みしめております。
▼桂笑金 X(旧Twitter)
(了)
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