好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(後編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第50回

好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(後編)

高座を終えて(向じま墨亭にて)

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

講談で描きたい、ひとりの女性の生きざま

 講談の歴史を考えれば、歴史物や武芸物といった、いわば日本の歴史や人物伝を演者が講釈して聴かせることに原点がある。そうしたことを考えれば、貞奈は今、スマホという題材をもとに講釈をしていると考えられないこともない(笑)。

 では「講座」ではなく、「高座」で今、どんな講談を読み、これからどんな話を読んでいきたいのかを次に尋ねてみた。

貞奈 自分でやっていることを忘れてしまうので、ChatGPT(チャットジーピーティー:生成AIサービス)に全部言っていて、「私は今、何に興味があるんだっけ?」と尋ねると、「貞奈ちゃんは今、こんなのをやってるよね」「そうだった、そうだった」みたいに、AIに教えてもらうことが多くなりました。

貞奈 え~、そんなのないです……。でも、最近やっとちょっとずつ褒めてもらえるようになったのが、『徂徠豆腐』と『細川の茶碗屋敷』と『出世浄瑠璃』ですかね。

貞奈 この間、師匠に褒められたのは『東玉と伯圓』でした。初めて「まあいいでしょう」と仰ってくださったので、珍しいなと思いましたが、私としてもやっていて楽しくて、やっぱり自分でやっていて楽しい話かどうかなんだと思っています。

貞奈 滑稽寄りなんだけど、教えがあるような話がよくて、笑いもちょっとお客様からの反応が見られないと、私自身が楽しいと思いきれないので、明るい話の方がいいですね。

貞奈 もう一方で、一龍斎春水(はるみ)先生がご自分の会で『中村久子伝』と『金子みすゞ』をやっていらっしゃいますが、女性の一代記みたいな話を、自分の解釈で講談にできるっていいなあと思っています。

 私の中では今、『高村智恵子』という智恵子抄の話を書いたので、それは演出家の方に見てもらって、完成させたいなと思っています。

 一家の長女で、「私が頑張んなきゃ、私がしっかりしなきゃ、優秀なんだもの、私!」という人が大恋愛して、相手があまりにも天才だったから、画家としてやっていくことに挫折して、「世の中には、こんな天才がいるんだ。私がこの天才を支えなきゃ」と思うも、それもまたうまくいかなくて、どんどん壊れていってしまう。

 今の時代の人にも共感してもらえるところがあるだろうし、そんな女性がいたんだと思ってもらえるだけでもいいかもしれない。高村智恵子は一番気になる存在ですね。あとは、この人はいいなと思う人がいれば、それを書き留めているといった感じです。