〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
掲載記事300本記念
- 落語
話楽生Web 編集部
2026/01/25
小さん師匠の「おめでとう」から始まる正月
弟子一同が身構える中、「うちの師匠は朝湯に入る」というさっぱりした黒紋付の小さん師匠が、午前6時ぐらいに自宅の2階から1階の道場へ降りてくる。ドンドンドンドン。小さん師匠の足音は独特だったという。
そして、いよいよ弟子一同が待ちわびた師匠が登場。第一声は「おお、おめでとう」。そのひと言で、寿ぎの気分が、石油ストーブで暖められた剣道場の隅々をさらに温かに包んだ。
「師匠のあいさつは必ず同じで『今年も一年な、病気しねぇで、頑張ってやってな』。定番なんです、それしか言わない」
言葉を違わず、さん喬師匠は記憶を呼び覚ます。お屠蘇代わりに、酒とおせち。雑煮をいただき終わる頃に、小さん師匠の「それじゃ、行くか!」という言葉の号砲が鳴る。弟子たちが一斉に立ち上がる。
「それからみんなで、黒門町に行くんです」
「黒門町」とは、八代目桂文楽師匠のこと。落語家の大御所を、住まう場所で呼ぶ習わしが落語界にはある。
五代目小さん師匠は、1947年(昭和22年)に真打に昇進したが、披露興行中に師匠の四代目柳家小さんが急死したため、急遽、文楽師匠の預かり弟子になった。よって、あいさつは欠かせない。
「朝ですよ、目白駅に黒紋付の男が30~40人。異様ですよね。駅のホームにいる人はみんな避けるんです(笑)。
山手線で御徒町駅へ行って、黒門町の家まで歩いて、全員が順番に『おめでとうございます』『おめでとうございます』ってあいさつをします。そのまま、ほかの場所へ新年のあいさつに行く人もいれば、私らのように目白に戻る人もいる。目白に戻ったら、今度は来客を待つんですね」

落語家として高い評価を得ていた五代目小さん師匠は、映画やテレビドラマ、CMに出演するなど、いわゆる売れっ子落語家。年始客も多い。
「(初代 林家)三平師匠も時間を見計らって来られました。『おめでとうございます』『すみません、師匠は留守にしております』『構わない構わない』『どうぞ、お上がりいただきまして』って申し上げると、三平師匠も上がるのが礼儀だと心得られていますから、玄関先でお帰りにならない。『じゃ、ちょうだいします』ってお酒をちょこっといただく。お正月の独特の世界っていうか、景色ですね」
あべこべに小さん師匠が年始にうかがう場所もあったという。
「江戸消防記念会のトップの人たち(鳶の頭)のところには、必ずごあいさつにずーっと行ってました。そのお供で、僕が荷物持って、車の運転したこともありましたね。毎年、頭の方々が神楽坂で新年会を開いて、必ず師匠が一席なさっていました」
いま読まれています!
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第14回
〈書評〉 たぶん、僕のジャム。 (金子学 著)
~中学校を舞台に笑いが連発する短編コント小説集!
笑福亭 茶光
2026/07/29
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった一人の噺家への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
シリーズ「思い出の味」 第14回
馬琴と琴星と琴鶴と琴人と ~師弟の食事はいつもちぐはぐ
~どじょう鍋からサンドウィッチまで。師弟の食卓は、人生の味がする
宝井 琴鶴
2025/10/17
シリーズ「思い出の味」 第16回
師匠と香港楼と命名秘話
~緊張と感謝の中で頬張った麻婆豆腐
神田 紅純
2025/12/04
「かけはしのしゅんのはなし」 第14回
師匠、もうヨーグルト食べたくないって言ってたよ
~お中元は品物を渡す日ではなく、感謝を届ける日!!
春風亭 かけ橋
2026/07/24
「マクラになるかも知れない話」 第十二回
霊んメイカー
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/07/25
「二藍の文箱」 第14回
三遊亭小歌という落語家がいた
~忘れないでほしい、日の当たらない道を好む藝人もいることを
三遊亭 司
2026/07/02
「講談最前線」 第23回
2026年7月の最前線 【前編】 (講談界の襲名について考える)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/07/17
「講談最前線」 第24回
2026年7月の最前線 【後編】 (聴講記:講談協会定席 / 講談『太閤記』小考④)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/07/18
「かけはしのしゅんのはなし」 第14回
師匠、もうヨーグルト食べたくないって言ってたよ
~お中元は品物を渡す日ではなく、感謝を届ける日!!
春風亭 かけ橋
2026/07/24
「マクラになるかも知れない話」 第十二回
霊んメイカー
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/07/25
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第14回
〈書評〉 たぶん、僕のジャム。 (金子学 著)
~中学校を舞台に笑いが連発する短編コント小説集!
笑福亭 茶光
2026/07/29
「令和らくご改造計画」
第十二話 「荒れるチラシ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/07/13
「コソメキネマ」 第十五回
漂泊の思ひやまず
~義理の父娘に人情を尽くすも、また寅さんの恋は実らない映画『男はつらいよ 寅次郎と殿様』をご紹介
港家 小そめ
2026/07/23
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第21回
日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/29
「エッセイ的な何か」 第14回
「生きていてくれ」と思いながら落語をやった夏
~真夏も真冬も、落語は熱い!!!
三笑亭 夢丸
2026/07/22
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第14回
サッカーワールドカップから人が興味を持つキッカケを考えてみた
~サッカーも落語も人生も。新しい扉を開く勇気をくれる、熱くて優しいエンタメ論
服部 拓也
2026/07/27
シリーズ「思い出の味」 第25回
芸とともに受け継がれる一門伝統の味
~人を思い、芸を磨き、心をつなぐ伝統の味をほのぼのと綴った、食のエッセイ
露の 五九洛
2026/07/19
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった一人の噺家への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「令和らくご改造計画」
第十二話 「荒れるチラシ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/07/13
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「二藍の文箱」 第14回
三遊亭小歌という落語家がいた
~忘れないでほしい、日の当たらない道を好む藝人もいることを
三遊亭 司
2026/07/02
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第42回
一途に講談を生きる 田辺いちか(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/15
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
月刊「シン・道楽亭コラム」 第15回
彦八まつり、芸協らくごまつり、謝楽祭 ~三大祭を全部巡って見えた、それぞれの魅力
~同じ落語のお祭りなのに、三者三様の魅力が面白い。現地で感じた熱気と空気感をお届けします!
シン・道楽亭
2026/07/10
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第43回
一途に講談を生きる 田辺いちか(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/16
「講談最前線」 第23回
2026年7月の最前線 【前編】 (講談界の襲名について考える)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/07/17
シリーズ「思い出の味」 第25回
芸とともに受け継がれる一門伝統の味
~人を思い、芸を磨き、心をつなぐ伝統の味をほのぼのと綴った、食のエッセイ
露の 五九洛
2026/07/19
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった一人の噺家への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「エッセイ的な何か」 第13回
6月26日は、露天風呂の日 →背中側だけ半身浴する友人を見た男の決意
~湯けむりの向こうに、シュールな光景があった
三笑亭 夢丸
2026/06/24
「くだらな観音菩薩」 第14回
烏瑟沙摩明王(うすさまみょうおう)
~叱るより先に、話を聞いてあげたい
林家 きく麿
2026/06/16
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
「二藍の文箱」 第13回
地図にない街、地図にない店
~京都、新宿、上野、浅草、池袋。師匠と行った名店の記憶
三遊亭 司
2026/06/02
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25