第八話 「酔っ払いにSNSを」
「令和らくご改造計画」
- 落語
三遊亭 ごはんつぶ
2026/03/12
#5
しばらく考えたあと、彼は言った。
「兄さん。電流じゃなくて、操作できないようにしましょう」
呼気センサーでアルコールを検知したら、スマートフォン自体が動かなくなる仕組みである。
僕は思った。
「最初からそれで良かったんじゃないか……」
こうして高圧電流スマートフォンは、酔っていると操作できないスマートフォンとして改良された。
これで安心だ。もう深夜の意味不明なツイートは消える。
みんなそう思った。
だが、数日後、別の問題が発覚した。
酔っ払いツイートは、確かに消えた。
その代わり、 素面(しらふ)で病んでいる落語家
──つまり一番ヤバい奴らが、かえって目立つようになってしまったのだ。
酔っている時の弱音は、まだ笑える。だが素面の病みツイートは、どうにも笑えない。
そこで協会は新しいルールを作った。
病みツイートをすると、イエローカード。二枚でレッドカードで、スマートフォン没収。
ただし、没収されたスマートフォンを取り戻す方法はある。
寄席の高座に無償で70回上がること。
予算の少ない協会の考えそうなことである。
そんなある日、一人の真打がスマートフォンを没収された。
その投稿はこうだった。
「最近、前座さんたちの様子がおかしい。まるで誰かに操られている」
協会はこれを「病みツイート」と判断した。
すでになぜかイエローカードを一枚持っていた真打は、これが二枚目となり、スマートフォンは没収された。
そして今、無償の高座を続けている。
「残り53回なんだ」
そう言って、寂しそうに笑った。
そして小さく続けた。
「……あのツイートは、病んでたわけじゃないんだけどな」
僕はその言葉を、笑えなかった。
なぜなら――
僕にも、思い当たる節があるからだ。
最近、前座さんたちの様子は実際におかしい。
目が虚ろで、どこか遠くを見ているような顔をしている時がある。
そんな時に限って、理解不能な騒動を起こす。
──まるで、誰かに操られているみたいに。
……やはり最近、楽屋の様子がおかしい。
― 続く―
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