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〈書評〉 浅草木馬館日記 (美濃瓢吾 著)

「芸人本書く派列伝 クラシック」 第13回

「着流しに下駄ばき」の青年浪曲師

 そんな風に、浪曲に関係するくだりや、少し前の浅草の情景が出てくる箇所などを拾い読みしていたら、思わぬ名前に出くわした。

 五月小一朗(さつきこいちろう)である。五月一朗に1993(平成5)年入門、その後しばらくして休業し、さまざまな活動に手を染めた。前衛落語家・目白バタイユの顔もあり、木馬亭を借りての興行に臨んだこともある。

 その小一朗入門当時のスケッチだ。「涼しい目をした」青年は毎日「着流しに下駄ばきという出立」で、追っかけのような若い女性に熱い視線を送られているところを美濃は目撃している。

 小一朗はもうこの世にいない。

 新型コロナウイルス流行の少し前から浪曲に復帰していた。私は神保町芳賀書店の上にある東京キララ社での独演会に何度か足を運んでいる。三味線はなく、韓国のパンソリで使う太鼓、チャンゴを打ちながらの浪曲だった。試行錯誤しながら続けていることを嬉しく思っていたが、2021(令和3)年の夏に熱海市にあった自宅で亡くなってしまった。訃報があまりにも突然で、しばし呆然としたものである。

 本書を読んで、そのときのことを思い出した。