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とめどない嘘のつくろい
「艶やかな不安の光沢」 第3回
- 落語
林家 彦三
2026/06/12
「麻暖簾(あさのれん)」という噺がある。夏の噺である。
ひとくちに言えば、あんまさんが療治先で繰り広げる珍事、といったところだが、演題にも使用されている麻の暖簾がすじ書き上の重要な仕掛けであり、また同時に風情ともなる。
私はかねてから、噺の辻褄、というような連作をひそやかに画策していて、こっそりと仲間内の数人に話しては賛同を得たり、馬鹿にされたりしているが、それはひとつの噺の成り立ちにおいて、もちろん諸先生方のご著作を参照することにかけてはにわかながらもその成果をできるだけ有難く拝むにしても、その細かい〈縫い目〉の部分、いわゆる時間をかけて、幾世代にわたって洗練される、あるいは工夫される、という古典落語における常套句(じょうとうく)が用いだされたときには、〈つじつま合わせ〉というものこそが、その全体をこそ縫い留めてきたのではないか、という、これはわれながら空想にも近しい仮説に基づく。
たとえば、東大落語会編『落語辞典』(青蛙房)の解説に拠ると、〈麻のれん/別名「按摩の蚊帳」「めくらの蚊帳」/盲人の手つきや表情を主にしたはなしである。〉とだけあって原話も記されていないから、それを良いことに無知をふりかざして勝手な想像をしてしまうと、まずはなにかの要素が、落ち処があったとして、それが盲目であることに関する手ざわりである、ということだった場合、それが蚊帳となれば、まずは蚊が出る。となると、季節は夏となる。布地は麻になるだろう。じんわりと汗が出る。遠雷が鳴る。その音。たまに屋敷を抜けてゆく風は、清々しい。酒は直し(上方では柳蔭、暑気払いの混成酒)になり、それを冷やすための長屋の井戸の水はなおも涼しく感じられる――というような辻褄合わせがそこに立ち現れる、という順序であり、この場合、おもむろに立ち現れた夏の宵闇の灯火やその静かさというものこそが、あとづけながらも物語全体を織りなしている縦糸、横糸になる、というわけである。
繰り返すが、この作用はもちろんただの想像で、こういう細部の織りなしによって小さな虚構に真実味と情趣とが与えられ、洗練ないし工夫と言われているものがなされていくのではないか、ということが、これは主に実演家として多く感じることがある、というだけのことであるのだが、身体感覚というものにはそう言えるだけの、若干の頼り甲斐はあるらしい。なぜならば実際の稽古のおりに私が感じたところのこの噺の眼目は、盲人の勘違いによる面白さや滑稽味なんかよりも、じっとりとした夏の夜の暑さと、その涼味、あるいはむかしの日本家屋の奥行き、虫の羽音、そしてその小気味良くごわついた凹凸によって指先に微風を送るような、麻の暖簾の質感であったからである。

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