NEW
2026年6月の最前線 【後編】 (聴講記:名古屋・大須演芸場定席 / 講談『太閤記』小考③)
「講談最前線」 第21回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/06/16
左燕の講談への構えは前出のインタビューをご参照願いたいが、「顔はサエないけれど、話の方はサエるように……」という自身の紹介をし、個人にまつわる大阪場所に関するマクラから、小野川に田舎者と馬鹿にされ、谷風の門下に移る雷電の姿を描いた一席を、上方風のクスグリを交えながら読んだ。
確かな形で正面を切りながら、口跡鮮やかに、かつテンポ良い運びなので、登場人物が出世していく様ばかりでなく、土俵上の取り組みにもグイグイと引き込まれる、この日の興行の幕開きに勢いを付けた一席であった。
後半に上がった左南陵は『伊達政宗の堪忍袋』。「弟子の方が拍手が多い……」なんて、やきもち風のマクラには弟子を思う気持ちが見え隠れもする中、「名古屋には今、講釈師が3人いる。あと2、3人増えればいい」というマクラから、秀吉の期待を一心に受けた伊達政宗の活躍ぶりが面白くないと、大久保彦左衛門から命じられて、兼松又四郎は政宗を殴るが、それに耐えた小柄な政宗が大きな赤鬼に見えたというストーリー。
話の展開からは、名古屋で、そして大須で長く地道に活動をしてきた講釈師の気概が強く感じられたとともに、今後の名古屋での講談界の隆盛を願っているようにも思えた。決して派手さはないが、矍鑠とした姿で、時に笑いを差し挟みながら、アンコで聴かせる『曽我物語』などは、東京での修業時代に修羅場で鍛え上げた腕を感じさせる高座であり、それこそもっと色々な演目を聴かせてもらいたい。
そして中入り前には、3年ぶりの大須出演になるという田辺鶴遊が東京から出演。市内を巡り歩いていたら、織田信秀と信長の二代に仕えた戦国武将の平手政秀にまつわる公園を見つけ、その近くに「蜀山人珈琲」なるものを飲ませる店があったこと等々から、お得意の『蜀山人』を。
鶴遊の高座はとにかく明るく楽しく、聴き手をそらさないのが信条。このあたりは師匠である田辺一鶴譲りであり、講談をいい意味でエンターテインメントとして聴かせてみせる。本題にしても、蜀山人が詠んだ狂歌を並べるばかりでなく、特に今回は鶴遊の本籍地でもある名古屋や西の物語を逸話とともに紹介し、最後に「しりとり歌」や「江戸文字鎖」を披露して、江戸の言葉遊びの楽しさを披露。一席で二倍楽しい高座は名古屋でも全開であった。
ここに名古屋在住の女性講釈師の旭堂鱗林が入れば、まさに「名古屋講談祭」とも言えそうな興行になろうが、それはまたの機会に期待。
他、文五郎の上方風の短めの『青菜』。東京から来たと応えたら、それを散々いじられた(笑)泉薬師寺の笑いたっぷりの漫才。洒落ではないが、タクマの巧みなマジックも印象に残った。
名古屋には大須演芸場がある。そして番組が良い。もっと色々な人に名古屋という土地ならではの演芸を楽しんでもらいたい。そのことはずっと願っていることでもある。

いま読まれています!
「くだらな観音菩薩」 第14回
烏瑟沙摩明王(うすさまみょうおう)
~雨予報の謝楽祭、実行委員長への気遣い、猪頭天へのまなざし。誰かを責める前に、少しだけ優しくなりたくなる話
林家 きく麿
2026/06/16
「講談最前線」 第21回
2026年6月の最前線 【後編】 (聴講記:名古屋・大須演芸場定席 / 講談『太閤記』小考③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/06/16
「講談最前線」 第20回
2026年6月の最前線 【前編】 (年季明け! 旭堂左燕インタビュー)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/06/15
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
「噺家渡世の余生な噺」 第14回
同窓会という人生の確認
~変わらない顔。変わってしまった顔。変わらない声。変わってしまった人生。それらすべてを見てみたい
柳家 小志ん
2026/06/14
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
月刊「シン・道楽亭コラム」 第3回
小さな演芸場、大きな縁 ~シン・道楽亭、再始動の一年
~還暦を過ぎて見つけた「宝物」
シン・道楽亭
2025/07/10
「くだらな観音菩薩」 第2回
阿修羅
~私は良い人なので、お気軽に話しかけてくださいね!
林家 きく麿
2025/06/16
「ずいひつかつどお」 第10回
なぽりたんといっしょ
~つまり、ナポリタンはボヘミアン・ラプソディなのである
立川 談寛
2026/05/04
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
「噺家渡世の余生な噺」 第14回
同窓会という人生の確認
~変わらない顔。変わってしまった顔。変わらない声。変わってしまった人生。それらすべてを見てみたい
柳家 小志ん
2026/06/14
「艶やかな不安の光沢」 第3回
とめどない嘘のつくろい
~人はなぜ物語を作るのか。その答えが、夏の暖簾の向こうにある
林家 彦三
2026/06/12
「お恐れながら申し上げます」 第10回
謝楽祭の話
~祭の前の幸福な妄想
入船亭 扇太
2026/06/11
「講談最前線」 第20回
2026年6月の最前線 【前編】 (年季明け! 旭堂左燕インタビュー)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/06/15
「くだらな観音菩薩」 第14回
烏瑟沙摩明王(うすさまみょうおう)
~雨予報の謝楽祭、実行委員長への気遣い、猪頭天へのまなざし。誰かを責める前に、少しだけ優しくなりたくなる話
林家 きく麿
2026/06/16
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
「講談最前線」 第21回
2026年6月の最前線 【後編】 (聴講記:名古屋・大須演芸場定席 / 講談『太閤記』小考③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/06/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
シリーズ「思い出の味」 第6回
茶色いうどん
~自分の未来を見つめる8歳の少年
三遊亭 ごはんつぶ
2025/06/25
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第38回
新しい響きを持つ講談への挑戦 神田おりびあ(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/05/30
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第14回
ウケるごとに極まっていくその美貌
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/06/03
「二藍の文箱」 第13回
地図にない街、地図にない店
~京都、新宿、上野、浅草、池袋。師匠と行った名店の記憶
三遊亭 司
2026/06/02
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第13回
〈書評〉 浅草木馬館日記 (美濃瓢吾 著)
~芸を支えた建物の記憶と不思議な魅力
杉江 松恋
2026/05/29
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
シリーズ「思い出の味」 第19回
雪のココア
~内弟子時代に憧れた甘い味
柳家 わさび
2026/01/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第7回
世間せまないか?
~落語家を多数輩出する片田舎、神戸の垂水
桂 三四郎
2026/02/01
編集部のオススメ
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第13回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.3
~橋本さん亡き後に立ちはだかった超大型の壁
シン・道楽亭
2026/05/10
「座布団の片隅から」 第13回
声優
~話題の人気アニメ『あかね噺』で声優デビューさせていただきました!
三遊亭 好二郎
2026/05/07
「ずいひつかつどお」 第10回
なぽりたんといっしょ
~つまり、ナポリタンはボヘミアン・ラプソディなのである
立川 談寛
2026/05/04
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
「二藍の文箱」 第12回
午後の逡巡
~その街に息づいた食堂で、ひとり手酌もまた愉し
三遊亭 司
2026/05/02
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25