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〈書評〉 修羅の時 青春の時 (山田太郎 著)

「芸人本書く派列伝 クラシック」 第15回

北島三郎と過ごした青春

 時代が下ると、浪曲人気には翳りが見え始める。

 村田英雄の歌手デビューを皮切りに歌謡曲へと転じた西川興行社は、その名を新栄プロダクションと改めた。船村徹作曲の「王将」で村田が爆発的に売れ始めたころ、西川家に内弟子がやってくる。流しをやっていた渋谷で船村徹と知り合い、紹介されたのである。その大野穣(おおのみのる)が、後の北島三郎(きたじまさぶろう)である。

 まだ学生の西川賢(山田太郎)は、幸男に命じられ、仲間を引き連れて北島の出演する公開番組に出かけた。テープを投げたり、サブちゃん、と声援をかけたりの、サクラを演じさせるためだ。「次は北島三郎さんです」の『キタジ』のところで声を掛けるなどの呼吸を西川賢が教え込んだ。いわゆる親衛隊のはしりだろう。

 西川賢の十代は、新栄プロダクションが村田や北島らのドル箱歌手を抱えてのし上がっていく時期と重なっている。青春記がそのまま昭和の芸能史になっているのだ。

 初期の新栄プロダクションには何人もの若い衆が住み込みで修業をしていた。その中に、賢の兄貴代わりとなり、幸男の目を盗んでは一緒に悪さもしてくれた二人の青年がいた。一人は「東京の灯よいつまでも」のヒットがある歌手の新川二朗(しんかわじろう)こと沢田幸雄、もう一人が周防郁雄(すほういくお)、後のバーニングプロダクション創立者である。

 本書は、浪曲から歌謡曲に時代の好みが変わった昭和後期と令和の現在を人脈でつなぐ証言集にもなっている。

 浪曲にはプロレスや歌謡ショーなどの興行にノウハウを与え、その基礎を形作ったという側面がある。講談や落語と並び称される語り芸ではあるが、全国で興行を打ってきたという要素を無視できないジャンルなのである。本書はそれを知るための、格好の参考書となるだろう。

(以上、敬称略)

杉江松恋 X

  • 書名 : 修羅の時 青春の時
  • 副題 : 昭和・歌謡界の親方――西川幸男
  • 著者 : 山田太郎
  • 出版社 : 集英社
  • 書店発売日 :2002年7月
  • ISBN : 9784087803617
  • 判型・ページ数 : B6・208ページ
  • 定価 : ―

(毎月29日頃、配信予定)