霊んメイカー2
「マクラになるかも知れない話」 第十三回
- 落語
三遊亭 萬都
2026/08/25
起こる、起こる
ぽかんとしている私に、その女性は説明してくれた。
この現場にこの清掃会社が入るようになってから今まで、何も言わずに突然来なくなって、そのまま辞めてしまう、いわゆる“とんでしまう人”や、いくら聞いても理由を言わずに、「とにかく今すぐ辞めたいから」と即日で辞めてしまう人が定期的に出ていた。
ある程度、そういう人がいること自体は仕方がないが、妙に多い。
そこで「なんとかしろ」と無茶ぶりを受けた若手の社員さんが調べてみたところ、半年にひとり必ずそういう辞め方をする人が出ている。そして辞める人は、みんな同じ清掃ルートを担当している人だということがわかった。
もともと作業負担は均等になるようにルートが決められていたが、この清掃ルートがきついのかなと考えて、何度か清掃ルートの変更が行われたが、それでも辞める人が後を絶たない。『何でかなあ』と悩みながら、清掃ルートを組み直し、組み直ししていたときに、ある女性のバイトの人から言われたらしい。
「すみません。あの旧病棟の地下一階のトイレ、怖いから清掃入りたくないんですけど」
特にわけはないが、そのトイレに入ると鳥肌が立つらしい。たまにこういうこと言う人がいるんだよな、と思いながら
「わかりました。じゃあ、そのトイレが含まれないルートの清掃をお願いしますね」
そう対応し、終わってからふと思い立って調べてみると、今までとんだり、理由を言わずに辞めた人が担当した清掃ルートのすべてに、そのトイレが含まれていたそうだ。すぐにそれを上司に報告。上司も割とオカルトを信じる人だったので、すべての清掃ルートから、件のトイレを除外。
しばらく旧病棟の地下一階のトイレの掃除は、手の空いた社員で行うことにしたところ、なんと怪奇現象が起こる、起こる。
・背後から声をかけられて振り返るも、誰もいない。
・バン!と大きな音がして見てみると、すべての個室の、閉めたはずの便器の蓋が開いている。
・何もしていないのに、電気がついたり消えたりする。
・男子トイレに女性が入っていくのが見えて、注意しに行ったら誰もいない、などなど。
これは、やはり原因は……。
予想通り、そのトイレを清掃ルートから外してからとんだり、理由を言わずに辞めてしまう人はぴたりと出なくなった。
それ以降、そのトイレは清掃ルートには含まれず、手の空いた社員さんで必ずふたり以上で掃除しているのだが、社員さんも忙しい。どうしても時間が捻出できないときは、何も知らないアルバイトに「今日だけ、ここもお願い!」と言って、そのトイレを掃除させているということだった。
連続して入らなければ大丈夫だとは思うが、もし怖い目に遭って辞められると困るので、特別に教えてくれたのだった。
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