NEW

「すずめのさえずり」 第十三回

 さて、これだけではちと短いので、ついでに落語家になってからの夏の思い出をいくつか。

 昔から興行の世界ではニッパチと言って、2月と8月はお客様の入りが悪いとされている。その時期に仕事をいただけるのだからありがたいのだが、夏ならではの仕事といえば、野外での営業がある。

 我々世代は、ここが手薄だ。落語の冬の時代、数々の修羅場をくぐり抜けてきた上の世代の師匠がたと違って、我々落語ブーム以降の入門組は、それなりに落語を喋る場所には恵まれていた反面、イレギュラーな現場に弱い。

 先輩たちの話を聞いていると、昔はそれこそネタかマコトかわからぬが、流れるプールでやった、なんてエピソードが出てくる。そんな修羅場には遠く及ばないが、いくつか印象に残っている夏から秋の野外仕事をあげていく。

【キャンプ場】

 夜のキャンプ場ではなく、デイキャンプと言うのだろうか? 昼のキャンプ場にテントを張って遊ぶというイベント。落語の会場としてはダントツに広い。

 家族連れが多い客層に合わせ、他の出演者は、トトロやラピュタの主題歌でおなじみの井上あずみさんをはじめとする豪華メンバー。皆さん盛り上げる盛り上げる。

 落語は、閉鎖的な会場で、なおかつお客様が正面の前方に固まってくれているほどやりやすいのだが、それと正反対のこの状況で、さて演目は何にしよう。寄席はライブなので、基本的にはネタは決まっていない。その日のお客様の雰囲気や前の演者の反応により、その場で決めていく。

 事前のネタ出しというのは、この人のこの噺を聞きたい、という名人会的なものか、もしくはこの噺に挑戦するので聞いてください、という勉強会のような場合にされるものである。

 今回は野外イベント、しかも子供も多いところだったから、じっくり噺をするという雰囲気ではない。ここは「盛り上がってますかー?」と入って、小咄や仕草教室なんかをやるのがいいだろう。

 ところが主催者側の社長さんの強い希望により、演目はあらかじめ「まんじゅうこわい」に決まっていた。まあ「豊志賀の死」が大好きな社長さんでなくて良かった……と思いながら、西日と遠~くにいる子供たちに向け「まんじゅうこわい」を語ったのであった。