〈書評〉 世にも奇妙な君物語 (朝井リョウ 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第15回

華麗なる責任転嫁

 その点、歴戦の師匠方は違う。ある日の寄席で某師匠が、まったくウケずに高座を降りてきて一言、

 「今日の客は、笑いに来てないね」

 責任をお客さんに全振りした。寄席に笑いに来てない客がいるのか? 笑うつもりで来たけど、結果的にそんな雰囲気にならなかったんじゃないだろうか?

 真実は分からない。しかし、お客さんには悪いが、これでいいのだ。

 これくらいの精神力がないと、年間何百席の高座を務めることはできない。そして、お客さんが重い場合に、無理に笑いを取りにいかない噺を選択できるのが、落語の強みだと思う。

 私の場合は寄席だと、ウケない日ほど、笑わせようとまだまだ力が入ってしまうが、自分の独演会になると、笑いだけではない、いろんな手札を出すことでより楽しんでもらえる工夫もする。

 落語というのは、本当に奥深くて楽しい。そういう意味では、短編集と落語家の独演会はとても似ている気がする。

『世にも奇妙な君物語』(朝井リョウ 著)

 5つの短編が収録された小説。作者の朝井リョウさんが『世にも奇妙な物語』の大ファンとのことで、この小説は『世にも奇妙な物語』のような話をイメージして書き上げたという。

 私も小学生の頃、『世にも奇妙な物語』の大ファンだった。タイトルは忘れてしまったが、山の中からどうしても出られず、同じ茶屋に戻ってくる話はすごく怖かった覚えがある。

 意識してしまうと、どの話もオチまで読み終わった途端、小説を脳内で映像化した画面の片隅に『世にも奇妙な物語』というテロップが浮かび上がってきてしまう。