見えないものを見る

「二藍の文箱」 第16回

江戸を歩く

 さて、広重の『名所江戸百景』にはなしを戻す。

 毎月、広重百景から題材を取り、噺の稽古だけでなく、絵に描かれた場所を取材する。もちろん残っているもの、残されたものも沢山あるが、今ないもののほうが圧倒的に多い。

 見えないものに目をやり、そこにないものを感じようとする。

 二度三度、広重が描いた場所や街を訪れる。時に古い道を見つけたり、時に公園のベンチに座りただただぼんやりとその浮世絵の風景をあたまに浮かべる。そこに描かれた場所だけが重要なのではなく、どの道からそこへたどりつくのか。江戸切絵図でたどってみる。そして、どこを訪ねても必ずすることは、広重の視点がどこにあったのか考える。これが難しくて、だからこそおもしろい。

 わたしたちから見たら、江戸そのもののような広重百景だが、1856年(安政3年)から1858年(安政5年)に描かれたことを考えると、その時点ですでに江戸の面影を追っている。

 例えば一番最初、1月の題材である『品川御殿やま』は、品川の御殿山。

 桜の名所であった御殿山を広重が描いた時には、すでに御殿山の東側が、欧米列強に備えるための台場を造るために切り崩された後の御殿山で、その切り通しになったところをひとびとが行き来している。この広重の描いた御殿山は、その時代にありながらも、もはや往時を偲ぶ面影でしかない。

 その描かれた山に沿い、知らず知らずのうち、わたしたちは山手線や横須賀線に乗っているのもおもしろい。地続きとは言わないが、今、わたしたちは江戸の街の何層か上に暮らしているのは確かなようだ。

 歌川広重が晩年、集大成のように描いた名所江戸百景は、描かれた数年前にあった安政の大地震への復興祈念と鎮魂の願いがこめられていたとされている。

 やはり広重も、見えないもの――それは過去であり未来――を見つめていたひとりであろう。

 見えないものを演者と観客が同時に見る、それが落語だ。

名所江戸百景 出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」

日本橋の老舗蕎麦「薮伊豆総本店」へようこそ

(文中、敬称略)

三遊亭司 X

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三遊亭司 note

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落語と楽しむ江戸の味

  • 日程:
  •  2026年9月12日(土)
  •  開場 15:00 開演 15:30
  •  終演予定 17:30
  • 会場
  •  藪伊豆総本店
  •  (中央区日本橋3-15-7 八重洲聖徳ビル1階)
  •  → Googleマップ
  • 出演:
  •  三遊亭 司
  •  (目黒爺々が茶屋「目黒の秋刀魚」 ほか)
  • 料金:
  •  予約・当日 2,500円
  •  
  • ※終演後、ご希望の方にはおつまみとそばの
  •  宴会セット2,500円(飲み物代別)
  •  
  • ご予約:
  •  たけのこレシピ事務局(むらさき)
  •  メール → takenokorecipe@yahoo.co.jp
  •  電話 → 090-7804-9891
  •  

(毎月2日頃、配信予定)

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