〈書評〉 世にも奇妙な君物語 (朝井リョウ 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第15回

〈書評〉 世にも奇妙な君物語 (朝井リョウ 著)

異様な世界と巧妙な伏線、予想外の結末が待つ奇妙な短編集!

笑福亭 茶光

執筆者

笑福亭 茶光

執筆者プロフィール

笑わない客と落語家

 直木賞や本屋大賞を受賞している朝井リョウさんの短編集『世にも奇妙な君物語』。ミステリーものから、笑いに特化したものまで幅広く楽しめる。

 落語も滑稽噺や人情噺、怪談など、たくさんの種類の噺があり、笑わせるだけが落語ではない。

 私は、落語家になる前、漫才師をやっていた。売れはしなかったが、単独ライブだけは何度もやってきたので、『笑いを取らなくていい』というのは、落語の強みだとすごく感じている。誤解しないでほしいのだが、笑いを取った上で、『笑いを取らなくていい噺があってよい』という意味だ。

 寄席の楽屋では、必ずこういう会話が交わされる。

 「今日の客席はどう?」

 これはお客さんの多い/少ない、年齢層、落語に慣れているか/慣れていないか、聴く姿勢は前のめりか/そうでないか、要はウケるか/ウケづらいか、前座から始まる高座の情報を集約して、持ちネタから最適解を導き出さなければならないのだ。

 それでも、ウケない日はある。

 何とかウケようと、あの手この手を尽くす師匠もいれば、まるで意に介さず淡々と芸を見せる師匠もいる。降りてくると、大抵「重いなぁ」とうなだれる。

 我々のほうでは、客席があまり盛り上がらない状態のことを『重い』と表現する。もちろん『重い』にも程度があり、演者側の力量や相性、その日噛み合うかどうかなど、いろんな要素で重さは変わる。

 しかし、とんでもなく重い日があるのも事実。我々二ツ目程度の若手は、ウケないと自尊心が傷ついてしまい、つい落ち込んでしまうが、芸人がウケないくらいでいちいち落ち込んでるようでは、この世界ではやっていけない。