運と皆様のおかげです
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
- 落語
桂 三四郎
2026/01/01
あああああ……
常日頃から寺社仏閣巡りを欠かさない僕だけど
重要視するのはやはり「初詣」だ。
一年の計は元旦にあり。
初詣をどこにするのかは僕にとって大きな問題だ。
一度、伊勢神宮に初詣に行ったことがある。
元旦の伊勢神宮は霊験あらたかな様子で、外宮の参道を歩いていると
本当に心が洗われる気がする。
「お伊勢さんで心の洗濯を」
樹齢何百年の御神木を眺めると、抱えてる悩みが
いかに小さいものかと気付かされ、心が軽くなった気がした。
やはり元旦は伊勢神宮に限るな。
爽やかな心持ちで外宮から内宮に向かうバスに乗り込む。
元旦の内宮行きのバスは満員だ。
僕の隣の席だけが空いていて、そこにおばあちゃんが乗り込んできたのだけど
「あああああ……あああああ」
と嘆きながら僕の隣に座り込む。
元旦早々、一人で初詣に行くお年寄り、何かトラブルであったとしたらかわいそうだ。
ちょうど外宮で心が洗われ、僕の親切心は最高潮に高まっている。
「おばあちゃん、どうされたんですか?」
「あああ、暴力団に財布取られた……」
「え!?」
「暴力団に財布取られた……」
なんと僕の隣に、暴力団に財布を取られたおばあちゃんが座ってきたのだ!!
元日にこんなおばあちゃんから財布を取るなんて、なんという暴力団だ!!
暴力団と協力団
「暴力団に財布取られたんですか?」
「あああ、暴力団に財布取られた……」
「大丈夫ですか?」
「ああ暴力団に財布取られた……」
「警察とか連絡しました?」
「うう暴力団に財布取られた……」
このおばあちゃん、何を聞いても「暴力団に財布取られた」としか答えない。
もしかして「暴力団に財布を取られた」という口癖の人なのか?
ドラクエに出てくる、何度話しかけても
「ここはアリアハンの街だ」
としか言わないキャラクターみたいなもんなのか?
とにかく「暴力団に財布取られた」という言葉を投げつけられながら
内宮に着いた。
ほっておくのもなんなので、少しは協力してあげよう。
向こうは暴力団でも、こっちは協力団だ。
バスの添乗員さんに事情を話すと
「ええ!? おばあちゃん、暴力団に財布取られたんですか?」
「ああ、暴力団に財布取られた……」
「警察に連絡しましょか!!」
「暴力団に財布取られた……」
おなじみのやりとりを尻目に内宮へ。
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