微笑みながら中指を
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
- 落語
桂 三四郎
2026/02/25
中指グランドフィナーレ
上の階の踊り場に、仁王立ちのマトリックスばあさん。
ドアノブを握り締め、階段の下からばあさんを睨みつける僕。
互いに見交わす顔と顔。
もちろんここで引けるわけがない。
ここで謝るくらいなら、こんなことする意味がない。
というかそもそも謝る筋合いすらない!!!
僕はマトリックスばあさんを睨みつけながら
今までの恨みを込めた渾身の力でドアを
バァーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!
怒り狂ったマトリックスばあさんは
「くおらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
ドアの音が小さく聞こえるほどの怒号が鳴り響く。
殺される!!
肌で悟った僕は、そのまま階段を駆け下りマンションの外に逃げ
後ろを振り返った。
ん? 追いかけてこないぞ。
そうか、マトリックスばあさんといえど、普段は杖を使ってるお年寄りだ。
追いかけても追いつかないことはわかっていたのだろう。
なんか悪いことしたかもしれないな……。
他の住民にも迷惑かけたしな……。
そう思っていると、ばあさんの部屋の窓が勢いよくガラガラッ!!と開き
窓から顔を出したマトリックスばあさんは、無言でこっちを睨みつけながら
僕に向かって中指を立てていた……。
あの時の顔は、今でも鮮明に覚えている。。。
このマトリックスばあさん以外の隣人には恵まれてきたが
今はSNS社会で素性がバレてしまうと、僕が今どこで何をやっているかすぐにバレてしまうし
全く興味を持たれないのも、それはそれで寂しくもある。
もういい大人なのでご近所さんに迷惑をかけていないつもりではあるが
基本的に芸人なんて奴らは非常識の集まりでしかないので、無意識のうちにご迷惑をおかけしていたかもしれない……。
とにかくご近所さんとも付かず離れずで、そこそこ上手くやっていきたい。。。
もしお隣さんをはじめ、ご近所さんがこのエッセイを読んでいたら
「読みましたよ」や「いつも読んでます」と言われるのは恥ずかしいので
僕に向かって微笑みながら、そっと中指を立ててください。

(文中、敬称略)
▼落語家・桂三四郎 公式サイト
(毎月24日頃、配信予定)
こちらもどうぞ!
―― 桂三四郎『けっきょく選んだほうが正解になんねん』シリーズ連載一覧
いま読まれています!
「かけはしのしゅんのはなし」 第1回
初エッセイ ~水無月って何?
~旬の味を探訪する、ほっこりエッセイ
春風亭 かけ橋
2025/06/27
「浪曲案内 連続読み」 第13回
五稜郭始末記異聞 ~北海道に行ってきました。
~幕末の箱館で出会った助さんと熊さん。二人の人情は戦乱を越えて、いま浪曲へ
東家 一太郎
2026/08/17
「くだらな観音菩薩」 第16回
迦楼羅
~何気なく使う言葉の奥には、意外な由来と物語がある。笑いと人情が溶け合うエッセイ
林家 きく麿
2026/08/16
「令和らくご改造計画」
第十三話 「誰のおかげで」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/08/13
月刊「浪曲つれづれ」 第15回
2026年8月のつれづれ(「浪曲 陰陽師 迷神・打臥の巫女」、「浪曲 巷説百物語 芝右衛門狸」、港家小ゆきの挑戦)
~伝統を守りながら、変化する芸能の姿。浪曲の現在地を描く、月イチ浪曲レポート
杉江 松恋
2026/08/15
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「お恐れながら申し上げます」 第12回
落語好きの歯医者さんの話
~歯科医院の地下室に灯る落語の明かり
入船亭 扇太
2026/08/12
「かけはしのしゅんのはなし」 第8回
祖母と娘と、変わらないホットケーキ
~ふくらむ生地と、ふくらむ想い
春風亭 かけ橋
2026/01/18
月刊「シン・道楽亭コラム」 第16回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.4
~共同席亭という仕組みと、我々がまとまるための装置としてのシン・道楽亭
シン・道楽亭
2026/08/11
「噺家渡世の余生な噺」 第16回
同窓会という浪漫飛行へ
~人生の全盛期は、過去だと決めなくていい。今だからできる飛び方がある
柳家 小志ん
2026/08/15
「令和らくご改造計画」
第十三話 「誰のおかげで」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/08/13
「くだらな観音菩薩」 第16回
迦楼羅
~何気なく使う言葉の奥には、意外な由来と物語がある。笑いと人情が溶け合うエッセイ
林家 きく麿
2026/08/16
「噺家渡世の余生な噺」 第16回
同窓会という浪漫飛行へ
~人生の全盛期は、過去だと決めなくていい。今だからできる飛び方がある
柳家 小志ん
2026/08/15
月刊「浪曲つれづれ」 第15回
2026年8月のつれづれ(「浪曲 陰陽師 迷神・打臥の巫女」、「浪曲 巷説百物語 芝右衛門狸」、港家小ゆきの挑戦)
~伝統を守りながら、変化する芸能の姿。浪曲の現在地を描く、月イチ浪曲レポート
杉江 松恋
2026/08/15
「浪曲案内 連続読み」 第13回
五稜郭始末記異聞 ~北海道に行ってきました。
~幕末の箱館で出会った助さんと熊さん。二人の人情は戦乱を越えて、いま浪曲へ
東家 一太郎
2026/08/17
「お恐れながら申し上げます」 第12回
落語好きの歯医者さんの話
~歯科医院の地下室に灯る落語の明かり
入船亭 扇太
2026/08/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第16回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.4
~共同席亭という仕組みと、我々がまとまるための装置としてのシン・道楽亭
シン・道楽亭
2026/08/11
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第46回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/11
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第44回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/09
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第16回
まだ満足にビールが飲めていない夏
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/08/03
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第44回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/09
「令和らくご改造計画」
第十三話 「誰のおかげで」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/08/13
「かけはしのしゅんのはなし」 第14回
師匠、もうヨーグルト食べたくないって言ってたよ
~お中元は品物を渡す日ではなく、感謝を届ける日!!
春風亭 かけ橋
2026/07/24
「テーマをもらえば考えます」 第12回
スイカの夏
~天どん師匠のスイカへのこだわりから始まる、笑い満載の夏エッセイ
三遊亭 天どん
2026/07/31
「エッセイ的な何か」 第14回
「生きていてくれ」と思いながら落語をやった夏
~真夏も真冬も、落語は熱い!!!
三笑亭 夢丸
2026/07/22
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第46回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/11
「座布団の片隅から」 第16回
別荘
~優雅な大人の夏休み……のはずだった。涼やかな高原の別荘での珍事件を綴る爆笑避暑日記!!
三遊亭 好二郎
2026/08/07
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第45回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/10
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
編集部のオススメ
「かけはしのしゅんのはなし」 第14回
師匠、もうヨーグルト食べたくないって言ってたよ
~お中元は品物を渡す日ではなく、感謝を届ける日!!
春風亭 かけ橋
2026/07/24
シリーズ「思い出の味」 第25回
芸とともに受け継がれる一門伝統の味
~人を思い、芸を磨き、心をつなぐ伝統の味をほのぼのと綴った、食のエッセイ
露の 五九洛
2026/07/19
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「令和らくご改造計画」
第十二話 「荒れるチラシ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/07/13
月刊「シン・道楽亭コラム」 第15回
彦八まつり、芸協らくごまつり、謝楽祭 ~三大祭を全部巡って見えた、それぞれの魅力
~同じ落語のお祭りなのに、三者三様の魅力が面白い。現地で感じた熱気と空気感をお届けします!
シン・道楽亭
2026/07/10
「二藍の文箱」 第14回
三遊亭小歌という落語家がいた
~忘れないでほしい、日の当たらない道を好む藝人もいることを
三遊亭 司
2026/07/02
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25