〈掲載記事400本記念〉 上方講談の伝統を未来へ繋ぐ、継承者にして開拓者 旭堂南華(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第34回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/04/30
「講談道場 生徒募集」から始まった縁
ここに登場する田辺寄席は、1974年(昭和49年)から月に3回、南華が話すように、大阪は東住吉の桃ヶ池公園市民活動センターを拠点に活動を続けてきた、大阪最古とも言われた市民寄席であった。ボランティアスタッフが運営を手伝い、毎回、落語が5席、その間に講談や浪曲などが入ることもあった。活動については、会の会員になると冊子形式の「寄合酒」という機関誌で報告され、819号まで刊行された、今では貴重な資料である。
2023年(令和5年)3月の916回公演をもって幕を下ろしたが、その最終回に南華は出演している(演目は「赤穂義士外伝~山岡覚兵衛の妻」。当日の番組は、桂鞠輔『いのちのおうどん』、桂文太『うなぎ屋』、南華、桂文太『天王寺詣り』『抜け蟹』であった)。
南華 当時、「寄席あつめ」というグループがあって、その冊子に「講談道場 生徒募集」みたいな広告を載せてて、師匠である三代目南陵が道場長みたいに書いてある。で、“三代目と弟子たちが素人に教えます。無料”と書いてて、ミナミの小さな演芸やってた場所があったんですけど、そこで週一やったかな、夕方からやります書いてて、私が通っていた大学は茨木というところで家から遠かったんです。中学の時に剣道をやっていたんで、クラブは一瞬剣道部へ入ったんですけど、帰るのが遅くなるから、それはすぐ辞めちゃって、色々とコンサートや寄席を見に行くようになって、何回かその道場を見に行くようになって、講談ってどんな感じか習いに行ったんですね。
その時、たまたま同じ日に見学に来ていた主婦の方がいて、その人は東京で「琴鶴修羅場塾」へ通われてた人で、大阪には旦那さんの転勤で来た時に、なんか習えるとこあるかなと思ったら、ここがあったんでって。私は一応電話してから来たけど、その八田さんいう人は、そのままダイレクトに(笑)。で、東京でもそんなやってたから、ちょっと自信もあるしって、でも大阪と東京ではやり方とか違うところがあるから、なまじ知ってると……。私は全くわかっていなかったんで、そこから修羅場を、まずは『三方ヶ原』を稽古しました。
―― 大阪もやはり、最初は『三方ヶ原軍記』なんですか。
南華 大阪“は”『三方ヶ原軍記』からですね。「五色備え」までをまずやります。その時に空いている人が教えに来てくれるんです。四代目南陵とか、その頃は南学といった南左衛門とか、南光の南鱗、南北兄さんも入って、まだ間ァなしくらいでしたね。それが習ってみたら、めちゃくちゃ厳しかったんですよ(笑)。素人相手にこんなに厳しいんやと思って、ちょっとびっくりしました。その時は、70歳くらいのおじいさんと若い子とか何人かいてました。全体で5~6人は、いてたのかな。
「そもそも三方ヶ原の戦いは……」の「そもそも」からアカン言うので、「そもそも」を百回くらいやらされたって、これはネタでもあるんですが、気持ち的にはホンマに百回くらいやらされてるように感じて、大きい声にする、滑舌をよくするって、延々と……。軽い気持ちで来たら、なんて厳しいんだろうと。
で、八田さんはうまいんですよ。東京でやってたから。おまけに自分で作った張り扇とかも持ってて(笑)。「大阪は柝ィ(き:小拍子のこと)使うから、そんなに張り扇使わないんですよ」言われながら、みんな好きやってはって。それができたら次の話をとなるんですが、その時のネタも本尺(ほんじゃく)だったんですよ。だから長いんです。で、『太閤の風流』とか、南鱗兄さんには『赤垣の婿入り』つけてもらいました。
―― 『赤垣の婿入り』は、最近、東京では(神田)桜子さんが読んでいます。
南華 あれ、桜子ちゃんに、私がやったら言うたんです(笑)。絶対に面白くできるからって。コンプラ的にどうなんでしょうって話もしました。
―― 他にはどんなネタを教わりましたか。
南華 『木津勘』(『木津の勘助』)とか、『那須与一』とかですね。大学卒業まで行って、卒業してから師匠とこ入門して……。
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