〈掲載記事400本記念〉 上方講談の伝統を未来へ繋ぐ、継承者にして開拓者 旭堂南華(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第34回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/04/30
父の猛反対
―― 卒業して、すぐ入門ですか。
南華 いえ、3月に卒業して、昭和60年(1985年)の6月6日の日曜日でした。
―― 何か始める時には縁起がいい、6が並んだ日ですね。
南華 四大卒業で歳もいってたし、あの時代、四大を卒業したら就職なかったんです。就職するなら短大へ行けって言われてた時代です。でも短大って、入ったらすぐに卒業なんで、どうしても四大に行きたかったんです。うちの父親は信用金庫とか、自分の知ってるところを決めてきて、「もうここへ行きなさい。名前書いたら入れるから」みたいにしたのを、私は講釈師になりたいからって言ったら、「野垂れ死にしたいんか!」って怒られて、揉めたりしました。
その時は、妹は結婚して家にはいなくて、兄も東京の大学へ行ってそのままで、母親はもういなかったんで、二人暮らしだったんですが、それまでずっと一番言うこと聞いてた娘が、父親からすればわがまま言うようになって、家のことは全部してたんで様子を見ながら、6月になったら、そろそろということで(笑)。
―― そういう時代であったとは言え、色々大変だったんですね。
いわゆる「男女雇用機会均等法」が現行のように改正されたのは、1986年(昭和61年)。南華はその前年の1985年入門であるが、旧態依然とした当時の芸界で、そうした動きがすぐに取り入れられることはない。平成初期に就職活動を経験した筆者から見ても、男子は総合職、女子は一般職といったように、まだまだ女子の四大採用は厳しかったことを強く感じた。その時代に退路を断って、芸界への道を選んだ南華は、どんな修業をしたのか。
南華 師匠は女の弟子が入っても、すぐ結婚して辞めたり、その頃は英華姉ちゃん、当時の南蝶も辞めて2年くらい経った時で、先代の南花さんも結婚して、子どもができたらしく辞めて、なんかみんなそんなんで辞めていくんで、女の弟子はもう取らん言うてはったんです。私は大学へ行ってた時代から「南陵会」という師匠の会にちょいちょい行くようになって、その頃は他に講談会もなかったですから、ちょっと仲良くなろうかな思うて、師匠についていって、師匠は南陵忌の時なんかはずっと飲んでたんで、距離を縮めていってですね。女子大生やし、女子大生ブームやったし、師匠も仲ようしてくれて(笑)。
その頃、講談道場に後から二人、サラリーマンが入って来たんですよ。南啓、南洛といった人です。それで私が大学へ行ってた時に弟子入りしてたんですね。ところがサラリーマンなんで滅多に来なくって、それで日曜日になると、師匠のとこへ稽古に行くんです。ほんで私も稽古見せてくださいって、それで稽古を終えると一杯やるのに、おかずを作っていったりして、その頃はまだ師匠に奥さんもいたんですが、体調を崩して、入退院を繰り返していたんですが、それは最後に帰って来た時でした。
その時に師匠が飲みながら、「もう女の弟子は取らんけど、もう一人ぐらいやったら、取ってもいいかもね」みたいなことを言うてくれはって、ほんで「私、入りたいです!」って言うて、そうしたら師匠は「弟子にする」とも言わずにトイレに行って、その帰りに電話台のところにあったメモ帳に名前を3つ書いて、「どの名前にする?」って(笑)。
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