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午後の逡巡

「二藍の文箱」 第12回

 さて、料理の短冊に目を戻す。

 この季節、旬の筍煮を頼まない手もない。

 「たけのこ煮」としてある。

 かつお刺、ほたるいか、天豆、筍と旬が並ぶ。

 かつお刺とほたるいかには、線が引かれている。そうなると急に食べたくなる。ないなら仕方がない。でも、食べたい。

 あ、そうだ、ここは鮪のぶつもうまかった。が、選択肢を増やしてどうする。

 そんな中、異彩を放つのが、青椒肉絲(チンジャオロース)。……そうか、こちらも変化球で筍だ。旬の筍で青椒肉絲もいいではないか。

 でも、待てよ。ひとりで二品頼むとして、少し重たくはないか? でも、青椒肉絲、食べたい。誰か頼んでいないだろうか。と、料理の書かれた短冊を見るふりをして、いくつかテーブルの皿を盗み見してみる。首尾悪くして、目と目が合ってしまったら、「それ、なにを召し上がってます?」と訊いたっていい。

 こんなことを真剣に考える。

 かつ煮が食べたかったとしよう。

 かつ丼のアタマと頼むこともあれば、かつ煮皿と書かれた店もある、中にはかつの卵とじも。すべてが、かつ煮だ。

 で、かつ煮が食べたい時、頭数があればいいが、ひとりだったら、ここでやっぱり一瞬迷う。

 と、いうのも、卵料理と揚げ物はいずれも大衆酒場の花形である。フライに関しては言うに及ばず、卵料理なら目玉焼きからハムエッグ、オムレツはチーズやハム、納豆にまでひろがって、卵とじと守備範囲がとてもひろい。

 そうそ、先月のひびのさなこさんのイラスト、あの目玉焼きはうまそうだった。目玉焼きもいいな、と、選択肢が増える。

 でも、目玉焼きは先発投手型ではない。中継ぎのエースだ。

 例え話から例え話になったが、かつ煮のはなしだ。