小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編

月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回

『桃太郎』で開眼。月イチネタおろし生活が始まる

 なんとか子どもにウケたいと選んだ次の噺は、『桃太郎』。

 「子どもが出てくる噺」で、しかも「大人をやり込める噺」だからウケるに違いない、と考えた。ところが落語の『桃太郎』の絵本が見つからない。

 仕方がない、自分で書くか……。『桃太郎』はほぼ覚えていたので、足りないところをネットで補いながら、台本を書き起こす。そこに、寄席で気づいた笑いどころやくすぐりのメモを差し込んでいく。家で何度も練習して、いざ本番。

 これが、ウケた!!!

 そして、このときに目覚めてしまいました。

 「読み聞かせは、自分で書き起こしたほうが、断然楽しい!」

 子どもが通っていた小学校は都心にあり、子どもの数が少なく、1学年1~2クラス、我が子のクラスは十数人、という小規模校だった。そのため、忙しい朝の時間に読み聞かせに来る保護者は、学年に3~4人ほど。順番が回ってくるのは、だいたい“月に1回”だった。

 そして私には、なぜか「同じ噺をやりたくない」という、これまた誰にも頼まれていない謎のこだわりが当初はあった。つまり、月に1回、新しい噺を書き下ろして、子どもたちの前で初演する。月1回のネタおろしです。

 子どもに聞かせたい噺を探し、覚えようとして寄席に通い、絵本を漁り、落語全集をめくる。学年ごとに反応が違うことも面白く、満遍なくウケるもの、意外なものもあった。もちろん、ダダ滑りも数知れず……。

私の「読み聞かせネタ」ベスト3+番外編

 そんな10年の中で、特に頼りにして、繰り返し読み聞かせした噺を、勝手にベスト3として発表させていただきます! まず先に番外編から。

番外編 『一文笛』

 もともと私は三遊亭圓丈師匠から落語にハマった、新作落語好き。よく通っていた池袋の新作落語の会で、ある日、林家正雀師匠が『一文笛』(三代目 桂米朝師匠作)をかけられた。

 これが、もう、ものすごく良かったのです。

 その日は尖った新作ばかりで、トリの柳家喬太郎師匠が「今日はひどい会だった。良心は正雀師匠の一文笛だけだった」と仰ったほど。

 だからかもしれない、私の中で『一文笛』が強烈な印象を残した。なんていい噺だろう、これは子どもたちに聞かせたい、と。帰宅してすぐ、記憶を頼りに書き起こし、ネットで検索して細かいところを補正して、高学年のクラスに持っていった。

 ウケる噺ではない。だが、みんなが固唾を呑んで、しんと聞き入ってくれた。落語には大笑いする噺ばかりじゃなくて、こういう噺もあるんだよ、ということを伝えられた手応えがありました。

 今も大好きな噺です。