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〈書評〉 たぶん、僕のジャム。 (金子学 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第14回

誰も思いつかない景色

 うしろシティのコントで寿司屋のコントがある。

 寿司屋の親方が寿司を握っている最中に、ほかのことに気を取られる。長い時間、親方の手の中で握られ続けた寿司が客に出されることになるが、食べてみると、なぜか普通に手早く握った寿司より美味い。

 客はより美味い寿司を食べるため、親方が握ってる時間を長引かせようと、親方が握り始めると、他のことに親方の気が向くように仕向けるというネタがある。

 なんちゅうネタや。

 逆立ちしても思いつかないと、当時衝撃を受けた。

 うしろシティは二人ともネタを作れるコンビだったので、どちらのアイデアかはわからないが、このアイデアを爆笑コントに仕上げてしまうのは二人ともすごい。

『たぶん、僕のジャム。』(金子学 著)

 ”1話5分で読むコント”。19のコントが詰め込まれた短編集。

 一話一話完結しているが、中学生の仲良し三人組『僕』『田中』『へそ山』の学園生活を描いた物語でもある。『へそ山』というネーミングセンスだけで、もう才能がほとばしっている。

 物語は『僕』の視点で進む。そして何より、一話一話のクオリティが高い。

 ほのぼのとした世界観の中に登場する個性豊かな面々。“子供に向けた内容”と言いながらも子供騙しな笑いはなく、言葉の端々にセンスが溢れている。

 「コントをそのまま文字にしたら、滑ってるみたいになるんだよ」

 たしかに、これは小説の笑いだ。人が演じる漫才やコントのテンポ感を文章で出すことはできない。その代わり、文章の「間」が読み手の想像力を刺激して、コントの笑いとは違う面白さを感じさせてくれる。