情熱に出会い、魂を語る 神田紅(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第45回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/08/10
惚れ込んだ女たちの肖像
―― 勝手ながら、先生がこれまで臨んできた作品の個人的なベスト3を挙げると、『伊藤野枝(いとうのえ)』『中村哲(なかむらてつ)』、あとは『杉村春子(すぎむらはるこ)』も面白かったですが、やっぱり『マリリン・モンロー』……。
紅 『モンロー』は入れてほしい(笑)。『中村哲』も最近いろいろなところでお話させていただいています。来年1月には宗像で『アフガンの医師 中村哲』を読むことになっています。
伊藤野枝は四女のルイズさんともお会いしてこしらえた作品で、読むたびに野枝が乗り移っていると言われるんですよ。顔が似てるんですって。そう言われると、私も自分みたいな気がするし、でもあんなに汚くないよな、私はって(笑)。
以前にテレビの仕事で近藤真柄さん(婦人運動家)にお会いした時に、野枝さんは肩はフケだらけで汚かったけれど、いつも机に這いつくばって原稿を書いていたと話していました。労働者の中に飛び込んでいって、何人も子どもを産んで育てて、洗面器でご飯を炊いて食べていたりと、そうしたことに気を払う余裕はなかったんでしょうね。
でも大杉栄(おおすぎさかえ)はそこに惚れる。なんだこいつはって。書くものは力があるし、自分は理の人間だけど、実践はこの人だって一目置く。彼女は野性的と言われますが、体当たり人生なんですよね。そこに大杉栄の頭脳が加わり、持ち前の実践力と、そのエネルギーといったら凄い。
杉村春子先生は私の文学座の研究生時代にいらっしゃった方でしたが、その頃は、あまり憧れの女優ではなかったんですよ。

―― 舞台人や演劇人でも好きという人と、アンチに思う人が多いですよね。
紅 あの頃、文学座の女優として素晴らしいと思ったのは太地喜和子(たいちきわこ)さんでした。でも杉村先生は知的な男性にモテるんですよ。創作講談を作ってわかったことですが、努力を重ねた上の芸の色気が、惚れさせる。森本薫(もりもとかおる)が春子のために『女の一生』を書き残すなんて、素敵なことですよね。
自分のベストを挙げるなら、『柳原白蓮(やなぎわらびゃくれん)』を挙げたいです。節目の折に読んできた作品で、白蓮の嫁いだ宮崎家には今も出入りさせていただいています。『宮崎滔天(みやざきとうてん)』『柳原白蓮』『その後の白蓮』の三部作にしました。
今年(2026年)の10月18日に飯塚の伊藤右衛門邸で、久しぶりに『柳原白蓮』を読みます。白蓮と宮崎滔天の長男の龍介との出会いは、究極のラブストーリーで、はかなげで美しい白蓮には言い知れぬ孤独があり、それを龍介は見抜いてしまう。駆け落ちする二人が、生涯添い遂げるというのも好きなところです。白蓮は、歌人であり女性解放運動にも乗り出していきます。
勤王の歌人『野村望東尼(のむらぼうとうに)』も好きです。勤王の志士たちとの交流、特に高杉晋作(たかすぎしんさく)と歌を詠み合い、励ます。望東尼と高場乱(たかばおさむ)は、親戚なんですよね。高場乱は、玄洋社の母と言われた男装の女性。女でありながら志を貫く。勤王であろうが、女性解放運動であろうが、方向性は違うけど、そういうところに打ち込んでいく女性が好きですね。
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2026/01/25