2026年8月の最前線 【前編】 (神田鯉栄が帰って来た!)
「講談最前線」 第25回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/08/24
お盆興行・初日 ~これぞ「この一席!」
毎年恒例の「墨亭お盆興行」。その8月11日と12日の2日間に鯉栄は出演。題して「神田愛山と若手の会」と、そのままの会名だ(笑)。
初日は、弟弟子の神田松麻呂が最寄り駅から同道。一門は温かい。その松麻呂が先に上がり、もはや松麻呂十八番の一つとも言える「大船軒サンドヰイッチ物語」(宝井琴星・作)を軽快に読んだ。最近は連続物に端物に新作と松麻呂節を感じられるようになり、この話で言えば、「へ~、そうなんだ~」という隠れたエピソードを交えながら披露。

続いて上がった鯉栄は、叔父弟子の愛山に6年ぶりに会ったら、身の回りがトムとジェリーだらけになっていたと、時の経過を感じさせる、ご挨拶代わりのジャブを繰り出した後、墨亭が前座修業を行った池之端本牧亭に似ていて、この空気感が講談のイメージに合っているということを語った(ありがたい)。
そして、その池之端で師匠となる神田松鯉の「子ども鉢の木」を聴き、その頃、金髪であったにもかかわらず、思い切って入門を決めたこと。さらに師匠からは「講釈は男の美学だ。女を出すな」と言われ、修業に励んできたといったマクラから、松鯉譲りの「清水次郎長伝 ~羽黒の勘六」へと入っていった。
次郎長の好敵手である黒駒の勝蔵は、次郎長と兄弟分の盃を交わしている大和田の伴蔵と一触即発の状況にある。そこで次郎長が応援に駆け付けると、そこへ一人の僧侶が現れる。ところがその僧侶が実は……という展開だが、とにかく鯉栄の啖呵がいい。
ほかの講釈師、特に女性講釈師でも啖呵の切れる人はいるが、気の空くような啖呵を切らせたら第一だ。そればかりでなく、親分の貫禄も充分で、奴たちは奴たちで伝法な言動を見せるが、そこに親分との貫禄の違いが感じられ、実は刺客である僧(その正体は黒駒方の羽黒の勘六)のいわくありげな姿もいい。

侠客伝ならではの緊張感が感じられる中に、ケレンを挟み込み、笑いで解きほぐした緊張をさらに強めていくといった、まさに鯉栄一流の「この一席!」を聴くことができた。
その後に上がった愛山は、いつも通りのポーカーフェイスであったが、「松鯉一門で一番兄弟子に似ているのは鯉栄だ」と、これは愛山最大級の褒め言葉と素直に受け取った。
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