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2026年8月の最前線 【前編】 (神田鯉栄が帰って来た!)

「講談最前線」 第25回

お盆興行・二日目 ~お熊の命に迫る、鯉栄の講談力

 二日目は、従姉妹弟子の神田桜子の「間違えられた魂」(宝井琴星・作)から。

 鯉栄は、その高座姿を見てのことか、最近の女性講釈師はいろいろなことにチャレンジしていて羨ましいという話から、女性であるがゆえに、声の使い方に悩んでいた時期もあったと自身のことを振り返りつつ、「寛政年間」「相撲」というキーワードを挙げながら本題へ入っていく。

 その入り方から力士伝かなと思っていたところ、熱海の手前の月影村に……と、三遊亭白鳥・作の「鉄砲のお熊」へ。

 時次郎という美しい少年は、芝居の一座に入ることを夢見ている。その時次郎をいじめる長吉という少年。それを止めに入り、ならばと相撲で勝負するおみつ。そのおみつは女相撲の道へと進み、時次郎も長吉もそれぞれの道を歩んでいく。それから時が過ぎ、「お熊」という名前で土俵に上がるおみつが久々に故郷へ戻ると、そこで大事件に見舞われる……。

 幼い頃の時次郎とおみつは、互いが互いに思い合うという間柄で、そこに「女は心に3つの箱を持っている」と、その3つの箱について、なかば私の気持ちをわかってよ!と言わんばかりに、人目もはばからず、一人でグイグイと説明していく様子(3つの箱の中身に関しては高座で確認を!)。そして鯉栄自身の失恋談(?)と、話に自身の恋愛観が入るのが、もう一方の聴かせどころとしたら大袈裟であろうか。

 その高座を前にして思ったのは、そのたとえに、自身の恋愛観を取り込んだのと同じように、お熊が放つ「(恋よりも)相撲が自分の命である」というセリフであり、それはまた、今回復活をした鯉栄の「講談が自分の命である」という思いがこの話の真のテーマになりうるのではないかということだ。

 前日の「羽黒の勘六」にしてもそうだが、この日のマクラで話していた声の出し方といった点では、話を彩るために講釈に求められる強弱の用い方。さらに鯉栄講談の特長でもある威勢が良くて、読み口が鮮やか、啖呵が切れて、情に厚い点が話に満ち溢れていた。

 今回、出演してもらう際に、演目は当日のお楽しみでいいです!としたのだが、実は心の内で「この話をかけてほしい!」と思っていた二席があった。それが「羽黒の勘六」と「鉄砲のお熊」で(いや、本当に)、本題へ入った途端、2日間とも心の中でガッツポーズをしてしまった。

 ほかにもまだまだ聴きたい演目がある。これからの季節であれば「義士伝」にも光るものがある。鯉栄が所属する日本講談協会や落語芸術協会の定席、ほかの会でも聴いていきたいし、ぜひ、向じま墨亭でも無理をせず、のんびりと高座に上がってもらいたいと強く思っている。

 神田鯉栄、改めて、おかえりなさい!

神田鯉栄オフィシャルブログ「講談のある生活」

神田鯉栄 X

(以上、敬称略)

瀧口雅仁 X

(〈後編〉に続く。毎月13日頃、配信予定)