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2026年9月の最前線 【前編】 (聴講記:南陵忌)

「講談最前線」 第26回

笑いやケレンも楽しみな上方講談

19:00 旭堂南海「黄門と淀屋辰五郎」

 東京版で言えば、「水戸黄門記~雁風呂由来」であるが、南海版は「柳沢騒動」の一つとして描く。話に登場する淀屋辰五郎が柳沢吉保によって闕所となったからで、黄門様は湊川(「湊川建碑」)の後、宮(熱田)から鳴海、そして岡崎までやって来ての展開に。そして、土佐光起の描いた絵は「箱館の松」と、このあたりの違いが面白くもあり、東西による話の違いがなぜ起こるのか。そして何を原本とするのかと、あれこれと想像させる。

 謎の絵を前に「トサか?(土佐光起か?)」「にわとりじゃありません」といったような洒落を挟み、黄門様の旅のごとく、自由自在に話の寄り道をしながらといった、いかにも上方の笑いの多い講談。マクラで、教えを受けた中村幸彦氏(晩年は関西大学教授)の「何か事件があったら、元禄に放り込め」とは、講談の作りからすれば、けだし名言。私も国文学専攻であっただけに、中村幸彦という懐かしい名前を久々に耳にすることができた。

19:16 中入り

19:30 旭堂鱗林「出世の白餅」

 マクラで、今日の副題は「師匠『旭堂南鱗の復活を祝う会』」だ!と。繰り返しになるが、南鱗先生にはまだまだこれからも元気な高座を見せてほしい。

 元気といえば、元気が一つの取り柄であるのが、鱗林さんの高座。占ってもらったところ、97歳から花開くと言われた等々、中入りでいったん落ち着いた客席を今一度温めながら、藤堂高虎の出世譚へ。師匠南鱗と同様に、小拍子で調子を刻みながら、もちろんクスグリ盛りだくさんで、聴き手の集中力をそらさない一席に仕上げた。

19:54 旭堂南湖「蘇生の五兵衛」

 これまた東京版でいうところの『蘇生奇談』(『蘇生』)。「次から次へとおちゃらけた講談を。私は本格派講談ですから!」とは、伏線だったのか?と思わせる、話の芯は決して外さずに、ケレンを入れる時にもテンポは失わず、あくまでも話の一部として、緊張を解きほぐす笑いであると言わんばかりの高座はいつも通り。

 大食漢の五兵衛が、ある時、それが原因で倒れてしまい、葬儀を上げた後に蘇生し(というか、長い気絶?)、家に帰ると……という、明治初年に奈良の大和郡山で実際に起こった出来事の講談化。