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2026年10月の最前線 【後編】 (佐渡で講談を想う / 連続物の面白さを味わう)

「講談最前線」 第30回

連続物の面白さを味わう ~俥読みで聴く『新吉原百人斬』

●田辺銀冶と宝井琴凌、二人の真剣勝負

 講談の味わいの一つに、「俥読み」(くるまよみ、「車読み」ともいう)で話を楽しむということがある。長い連続物の話を一人の演者ではなく、複数の演者が読んでいく、いわばリレー講談のことであるが、それを「リレー」と呼ばずに、俥読みと呼ぶところが、講談らしい。

 その語源は不明とされることがあるが、軍記に登場する「車懸かり」がその基にあるはずだ。話のほうで言えば『甲越軍記』。その軸となる川中島の戦いで上杉謙信が見せたのが「車懸かりの戦法」である。一番手、二番手、三番手……と、次々に兵を繰り出して敵に休みを与えないで攻撃する戦い方で、単に「くるま」と言うこともある。

 高座という戦いの場(?)で、聴き手に、そして次に話を繋いでいく好敵手でもある演者とともに、読みの緊張感を失わずに話を次々に攻めていく。その戦法が効果的であれば、話もより充実したものとなり、だからこそ、ともに戦う仲間との絶妙な相性と話の紡ぎ合いが、高座をまた盛り立てていく。

 この話楽生Webでは軍談ウィークでの登場が多い田辺銀冶(たなべぎんや)と宝井琴凌(たからいきんりょう)が、11月に軍談ではなく、『新吉原百人斬』という世話物の俥読みに臨んでいく。

 野州犬伏の豪商である佐野次郎左衛門は、吉原の遊女八ツ橋に惚れ込むが冷遇され、妖刀・籠釣瓶(かごつるべ)で、八ツ橋をはじめとした人々を斬り殺すという、実際にあった事件をもとに創作された物語で、歌舞伎では『籠釣瓶花街酔醒』として知られる作品である。

 その前編にあたる、次郎左衛門の父・次郎兵衛(次郎吉)が起こす悪事の数々を、まずは5月の「新宿講談会 夜席」で披露した。その時の番組は、琴凌=A、銀冶=Bの「ABAB」展開で、次の通り。

 
 新宿講談会 夜席(2026年5月21日)

 (神田山兎 「三方ヶ原軍記」)
 (宝井琴人 「山中鹿之助」)
 (神田ようかん 「笹野名槍伝~海賊退治」)

  宝井琴凌 「お信殺し」
  田辺銀冶 「お紺馴れ初め」
  (お中入り) 
  宝井琴凌 「次郎吉故郷帰り」
  田辺銀冶 「お紺殺し」

 この二人による俥読みの楽しさと面白さは、今の時代、男性が女性がと記すのもなんだが、それでも銀冶が迫る、運命に翻弄されながら、男性の悪事とそれに巻き込まれていく女性の姿。対して琴凌が描く、「実はそうした男性の言動には理由があるのだ」という理屈と、理の上で次々に起きていく事件の行方。

 高座姿にしても、話に対するスタンスにしても異なる二人による、一つの物語への迫り方の相違が話の世界に奥行きを与え得た。