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破門のこと、初高座のこと

「二藍の文箱」 第18回

 入門してひと月経ったころ、師匠の三木助からカセットテープを渡された。おっと、カセットテープの説明はしなくて大丈夫ですよね。時代の流れに不安を覚える昨今のこと。

 そのカセットテープには、『小さん 道灌』とあった。

 「師匠ので『道灌』覚えろよ」

 師匠からテープをもらい何度か聴いてみたものの、しばらく数日はそのままにしていた。このまま流されるように落語を覚えたら、ホントに落語家になってしまうぞ、というのが本音だった。入門を志願して落語家の見習いになったものの、覚悟がゆらぐ。

 それに加えて高座でのしゃべり方はおろか、覚え方もよくわからない。それでもことあるごとに「道灌、覚えたのか?」と訊かれるので、何度か小さん師匠のその『道灌』のテープを聴いてみた。

 ご案内の通り、五代目小さんはボソボソっとしたスロースターターで、徐々に噺に感情が乗り、声や表情も豊かになり、観客は知らないうちに噺の世界に引き込まれている。そんな落語だ。十八のわたしには、理解できないところ、感嘆するところ、圧倒されるところしかない。

 いつものように「覚えたのか?」と三木助に訊かれたわたしは、なにを思ったのか、率直と言えば率直に「ちょっと口調が合わないんですよね」と師匠に答えた。