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破門のこと、初高座のこと

「二藍の文箱」 第18回

 かくして入門から半年弱。

 池袋での師匠の会──「三木助 花緑 二人会」での初高座の日を迎える。会は三木助と花緑師匠が一席ずつで、それに加えて『ねずみ』を二人が連続口演する趣向であった。

 そんな会での初高座。

 初高座は大きくとちることもなく、かといってウケたかどうかは記憶にない。そこまで、余裕というよりも気にはしていなかったと思う。楽屋に下がり一瞬ぼんやりとしたが、前座に高座の余韻にひたっている時間はない。

 あとからお囃子さんに「三木助師匠、とても緊張して見てたわよ」と言われたが、27年後、わたしもそれを経験することになる。

 さて、ここからはわたしが直接見知ったはなしではない。

 初高座のその日。客席にいた両親に、やはり同じく客席にいらしたお客さんが「六久助さんの親御さんですか?いい藝人さんになられるといいですね」と、ご祝儀をくださったそうだ。

 わたしの藝人としてのはじめての祝儀は、どこのどなたかわからないお客さまからの、それだ。いまでもふと、その「詠み人知らず」のお客さんのことを思い出す。祝儀の如何ではなく、そんなお顔もお名前もわからないお客さんひとりひとりに、わたしたち藝人は育てられているのだ。

 あれから28年。わたしはそのひとの言う「いい藝人」になれているのかどうか。答えのないそれは、まるで秋風に問いかけるかのようでもある。

(文中、敬称略)

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