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破門のこと、初高座のこと

「二藍の文箱」 第18回

 師匠は口に出したか、表情でだったか、一瞬「何ぃ!?」となった。

 いま思い出しながら、わたしだって当時のわたしに「何ぃ!?」となるぐらいだ。しかし師匠は「しょうがねぇなぁ」と、しぶしぶながら目の前で一席やって、稽古をつけてくれた。

 いよいよこれは逃げられない。人間国宝の手本に対して口調が合わないと宣い、師匠に稽古をつけてもらったのだから。

 師匠との『道灌』の稽古はどこでもあった。自宅の居間。地方の楽屋。わたしが運転する車の中。そんなのは当たり前で、ロケ帰りのロケバスの中なんていうのもあった。

 「とちったらそこで終わりな」

 その日も横浜から東京へ帰るロケバスの中で師匠はそう言った。番組スタッフが同乗しているロケバスでの稽古も、すっかり慣れっこになっていた。

 あと二、三分。噺が佳境どころかサゲにさしかかったところでつっかえると、「惜しいなぁ」とそこで稽古は終わった。

 ある日。師匠の居間に急に呼ばれて、やってごらんと言われた。内心、ここのところろくにさらってなかったな……と悔やんだが、それに対して「なかなかいいよ、このままやんな」と言われた。

 言われたわたしはしばらく稽古をやらなくなった。単純であり甘い人間だ。なので、わたしは弟子には甘い言葉はかけない。