情熱に出会い、魂を語る 神田紅(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第44回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/08/09
神田紅 近影(日本講談協会HPより)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。〈神田紅(かんだくれない)先生の前編/中編/後編のうちの前編〉
道なき道を突き進んだ半世紀
お笑いの世界で「第何世代」という表現が使われることがあるが、講談の、特に女性講釈師にそれを当てはめれば、第一世代は宝井琴桜(きんおう)、神田翠月(すいげつ)、天の夕づるになろうか。
そしてやっとのことで開かれた道、それも凸凹だらけとでもいうべき道を踏み固めながら進んできたのが、二代目神田山陽(さんよう)が育てた第二世代で、その中で積極的にメディアに進出し、高座では創作講談で注目され続けてきたのが神田紅である。
今年(2026年)、長くその職にあった日本講談協会の会長を退き、後述する「輝く女シリーズ」を軸に、いま一度、講談の楽しさや面白さに向かっていきたいということで、今回、インタビューを試みた。まずは神田紅の講談観について尋ねてみた。
―― 先生は自伝やそれに準ずる本を出されているので、今に至る経緯の詳細はそちらに譲るとして、改めてこれまでの講釈師人生を振り返って思われることや、最近の講談界に思うことをお聞かせください。
紅 いい時代になったな、と。私たちが入門した頃は、男尊女卑もまだ強く、男ありきの時代だったので、厳しくて、それに虐げられてきた時代でした。「芸人は腕だよ」と師匠から言われていたので、時流を狙って一生懸命にやったとしても、「女流は……」とか「女のくせに……」と言われました。
それを師匠の二代目山陽がうまく「女流」を前に出そうと、まずは芸協(落語芸術協会)に色物で入れてくださった。師匠という傘があって、その隙間を縫って出てこられた。
師匠も新しいことを常に考えて、それを行動に移していた芸人だったからこそ、私たちもそこから出てこられた。言ってしまえば、隙間産業みたいな感じ、それが私の感覚です。
今の時代は男も女もない。実力でいける時代です。でも、それが当たり前なんです。正直言えば、うらやましい。もちろん、それなりにきついでしょうけど、女でも芸を磨ける時代がきたなと思います。
―― 時代がやはり変わったということでしょうか。
紅 講談界は遅れていますが、やっと時代に合わせて動けるようになってきた。私たちの世代が自分たちでこじ開けてきたという思いもあります。
今年、荻野吟子(おぎのぎんこ)をかけるんですが、吟子も必死に道をこじ開けてきて、そこに居続けることをした人です。私の人生の厳しさとは異なりますが、同じ女性として人生を重ね合わせもします。
―― 時代を受け入れながら、講談の世界を生きてきた、いや生き抜いてきたということでしょうか。
紅 時代を確かに受け入れてきました。私は福岡の出身ですが、九州はそういう男尊女卑の土地柄でもあるんです。教えてもらいたいと願っても教えてもらえない。ならばどこかに隙間はないか。やりたいという情熱があれば、そこに自分から入っていき、何とか道を開いていくということです。
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