2026年4月のつれづれ(町田康の木馬亭公演、雲月会長の留任と舞台復帰、浪曲「陰陽師」の新展開)
月刊「浪曲つれづれ」 第12回
- 浪曲
杉江 松恋
2026/04/09
関西からの刺客、京山幸太&新内光希
話を戻すと、2席目の浪曲は関西から京山幸太と新内光希が出演した。新内は、昨年から幸太の相三味線として活動している。大学時代から付き合いのある間柄だそうで、息の合ったところを聴かせてくれる。
この日の演目は、町田康原作の「パンク侍、斬られて候」前編であった。プロローグにあたる箇所で、新内があまり聴いたことのない節を弾いていて、新鮮に感じた。後で詳しい人に指摘されて気づいたのだが、これは「メシ食うな」の前奏だろう。なるほどの町田康トリビュートである。節と三味線の走り具合も含めて、幾度か聴いた中でいちばんの「パンク侍、斬られて候」だったと思う。
幸太はもともとヘヴィーメタルなどの音楽好きだったが、源流である黒人音楽に接近し、日本にも同じようなものはないかと尋ね歩いているうちに浪曲に遭遇したという経歴があるという。この日のマクラで話していたが、1970年代の歌謡曲にかっこいいものが多いことに気づき、「年下の男の子」の作曲家・穂口雄右に連絡を取ったところ、浪曲を聴くように勧められたのだそうだ。キャンディーズから浪花節、なかなか衝撃的な出会いである。
その京山幸太は、5月17日(日)にお江戸両国亭で昨年に続き、二度目の東京自主公演を行う。現時点でまだ残席があるかはわからないのだが、こちらも行ける方はぜひ。

(クリックすると拡大します)
小説と浪曲が交差する未来への期待
中入を挟んで、マチダ地蔵尊の演奏である。町田康(節付き朗読)、中村jizo敬冶(ag,cho)、浅野雅暢(sax,flute)、客田岳(b,ag,perc,cho)、emyu(violin、cho)という構成で、1時間近い演奏となった。途中で町田は木魚を出し、阿呆陀羅経よろしくチャカポコと叩いて歌った。その曲かどうかは失念してしまったが、中島らもの名を呼ぶ場面もあり、個人的には感慨深かった。世の中の出鱈目さを歌う詩人でもあった中島らもがもしこの世にいたら、浪曲をどんな風に聴いてくれていただろうか。
第41回 谷崎潤一郎賞を受賞した長篇小説『告白』(2005年、中公文庫)は、河内音頭の「河内十人斬り」から着想を得て書かれた作品である。現在も音頭として人気のある「河内十人斬り」に、初代京山幸枝若からの強い影響があることは改めて言うまでもないだろう。町田作品には、発語された時の効果を考慮して言葉を選んでいると思われる節がある。他の現代作家とは創作の取り組みが少し違うような気がするのだ。
京極夏彦との対談(『群像』2025年11月号)で、町田はこう発言している。
――僕が最近の小説を読んで時に不満に思うのは、みんな一つの日本語で書かれているような気がするところです。僕らはみんな日本語を使っているけど、家でしゃべる日本語と会社でしゃべる日本語は違うじゃないですか。いろんなレベルの日本語があるはずなのに、一つの正しい日本語があるかのように書かれた小説を見ると、もっと混ぜてほしいと思うんです。高尚な日本語も低俗な日本語も、うまくミックスして面白い芸を見せてほしい。
おそらくこの辺の感覚に、浪曲と町田小説の接点を考えるヒントがある。大盛況に終わった一夜が小説と浪曲の双方に新たな化学変化を起こすことを望みたい。

(クリックすると拡大します)

(クリックすると拡大します)
いま読まれています!
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第15回
揺れ動いた、30代最後・熊本での夏
~祭り、地震、再会、人の優しさ。この夏に見つめた、自分の笑いの原点とは?
服部 拓也
2026/08/28
「かけはしのしゅんのはなし」 第15回
海水浴は、だいたい思い通りにいかない
~楽しいはずの家族旅行に、次々と試練が……
春風亭 かけ橋
2026/08/29
「講談最前線」 第25回
2026年8月の最前線 【前編】 (神田鯉栄が帰って来た!)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/08/24
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「講談最前線」 第26回
2026年8月の最前線 【後編】 (聴講記:津の守講談会、田辺凌鶴の会 / 講談『太閤記』小考⑤)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/08/25
シリーズ「思い出の味」 第21回
レンズ豆のスープ
~若き日、スペインでの空腹、フラメンコギター、そして人の優しさ
天中軒 景友
2026/04/17
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「エッセイ的な何か」 第15回
あの夏の夜、前座たちは海を目指した
~師匠には内緒の、前座五人の小さな冒険。特別ではない一夜が今も心に残る、夏の青春譚
三笑亭 夢丸
2026/08/21
「コソメキネマ」 第十六回
二階から
~「馬の脚」専門の旅役者の矜持と哀愁を描く映画『旅役者』をご紹介
港家 小そめ
2026/08/23
「マクラになるかも知れない話」 第十三回
霊んメイカー2
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/08/25
「講談最前線」 第25回
2026年8月の最前線 【前編】 (神田鯉栄が帰って来た!)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/08/24
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第15回
揺れ動いた、30代最後・熊本での夏
~祭り、地震、再会、人の優しさ。この夏に見つめた、自分の笑いの原点とは?
服部 拓也
2026/08/28
「マクラになるかも知れない話」 第十三回
霊んメイカー2
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/08/25
「コソメキネマ」 第十六回
二階から
~「馬の脚」専門の旅役者の矜持と哀愁を描く映画『旅役者』をご紹介
港家 小そめ
2026/08/23
「講談最前線」 第26回
2026年8月の最前線 【後編】 (聴講記:津の守講談会、田辺凌鶴の会 / 講談『太閤記』小考⑤)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/08/25
「すずめのさえずり」 第十三回
夏
~小学生のみんな、夏休みの宿題は自分でやろうな!!
古今亭 志ん雀
2026/08/26
「かけはしのしゅんのはなし」 第15回
海水浴は、だいたい思い通りにいかない
~楽しいはずの家族旅行に、次々と試練が……
春風亭 かけ橋
2026/08/29
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第4回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/27
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「エッセイ的な何か」 第15回
あの夏の夜、前座たちは海を目指した
~師匠には内緒の、前座五人の小さな冒険。特別ではない一夜が今も心に残る、夏の青春譚
三笑亭 夢丸
2026/08/21
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「講談最前線」 第25回
2026年8月の最前線 【前編】 (神田鯉栄が帰って来た!)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/08/24
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第16回
まだ満足にビールが飲めていない夏
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/08/03
「令和らくご改造計画」
第十三話 「誰のおかげで」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/08/13
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第44回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/09
「テーマをもらえば考えます」 第12回
スイカの夏
~天どん師匠のスイカへのこだわりから始まる、笑い満載の夏エッセイ
三遊亭 天どん
2026/07/31
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第46回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/11
「座布団の片隅から」 第16回
別荘
~優雅な大人の夏休み……のはずだった。涼やかな高原の別荘での珍事件を綴る爆笑避暑日記!!
三遊亭 好二郎
2026/08/07
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第45回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/10
「お恐れながら申し上げます」 第12回
落語好きの歯医者さんの話
~歯科医院の地下室に灯る落語の明かり
入船亭 扇太
2026/08/12
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
編集部のオススメ
「かけはしのしゅんのはなし」 第14回
師匠、もうヨーグルト食べたくないって言ってたよ
~お中元は品物を渡す日ではなく、感謝を届ける日!!
春風亭 かけ橋
2026/07/24
シリーズ「思い出の味」 第25回
芸とともに受け継がれる一門伝統の味
~人を思い、芸を磨き、心をつなぐ伝統の味をほのぼのと綴った、食のエッセイ
露の 五九洛
2026/07/19
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「令和らくご改造計画」
第十二話 「荒れるチラシ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/07/13
月刊「シン・道楽亭コラム」 第15回
彦八まつり、芸協らくごまつり、謝楽祭 ~三大祭を全部巡って見えた、それぞれの魅力
~同じ落語のお祭りなのに、三者三様の魅力が面白い。現地で感じた熱気と空気感をお届けします!
シン・道楽亭
2026/07/10
「二藍の文箱」 第14回
三遊亭小歌という落語家がいた
~忘れないでほしい、日の当たらない道を好む藝人もいることを
三遊亭 司
2026/07/02
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25