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夏川を 越す相方の 手を引いて

「朝橘目線」 第15回

夏川を 越す相方の 手を引いて

大好きな相方と、大好きな新大橋にて

三遊亭 朝橘

執筆者

三遊亭 朝橘

執筆者プロフィール

 「コロナ禍」という言葉を見なくなってきた。

 あの頃は出口の見えない閉塞感の中、みんな懸命に生きた。いろいろ失ったけど、逆に生まれたものもたくさんある。

 公園で娘たちを遊ばせていると、周りのママさんが「今日はパパ在宅だから、公園に来たんだ」とか話している。在宅ワークは、随分増えたことだろう。

 その点、落語家というのは元々、在宅ワークがメインである。落語家の仕事とは、即ち稽古。これは我が師・三遊亭圓橘の教えである。師曰く「サラリーマンの人たちが毎朝出勤するように、俺たちは毎日稽古をするのが仕事なんだ」。

 私は、子どもたちが学校や幼稚園に行った後に稽古している。自宅で座布団に正座をし、浴衣を着て本番同様、腹から声を出して稽古をする。

 ライフワークになりつつある圓朝物の怪談は、人を殺めたり、喧嘩口論になったりする場面が多い。一応、窓は閉めているが、いつ通報されてもおかしくはない(もうされてるかもしれない)。電話を受けたおまわりさんが住所を聞いて「また落語か」とか言ってるのかな? だったら良い街だ。

 とにかく落語家は、稽古という名の在宅勤務の鬼である。そして夕方、子どもたちを迎えに行き、気が済むまで公園で遊んでもらい、家に帰る。夕食をみんなで食べてお風呂に入って寝る。

 実に規則正しく、勤勉な生活だと自負している。

 いつ稼いでいるの?と聞きたい御仁もあろうが、それは野暮というものである。