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夏川を 越す相方の 手を引いて

「朝橘目線」 第15回

 お別れの日は晴天だった。

 自転車屋さんに、家族四人で歩いて向かった。本当はもう一度乗りたかったけど、これ以上相方を困らせたくないので、手で引いた。

 お店に着き、事情を伝えて処分をお願いした。店員さんが「これ、うちがここに店出した頃の型ですよ……ここまで乗ってもらえたら本望です」。本望か。それは良かった。

 でも私はまだまだ、一緒に出かけたかった。何度も行ったお台場海浜公園で、潮風に吹かれてぼんやりしたかった。こんなもん、本望でもなんでもない。辛いので努めてあっさり店を出た。

 その後、譲り受けた自転車の防犯登録のため、後釜に乗って再度来店した。ちなみにお守りは、ちゃんと後釜に譲渡した。あの時のような気持ちにはなれなかったけど。

 必要書類を書くため店内に進むと、相方がいた。サドルに小さく切った、薄緑の養生テープが貼ってあった。それをどうするか、聞けなかった。

 もしかしたら、使える部品はリサイクルしてもらえるかもしれない。いつかどこかで、そんな自転車とすれ違ったりするんだろうか。

 小柄な相方と過ごした日々を、私は忘れない。

 落語家のくせに感傷に浸るだけで、オチも何もないのはいただけない。一台壊れたところにもう一台もらえて、これがホントの自転車操業だ。はぁ……。

 いよいよ夏本番。サイクリングには、良い季節だ。

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