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「生きていてくれ」と思いながら落語をやった夏

「エッセイ的な何か」 第14回

 急いで着物を着て、そのまま何食わぬ顔で高座へ。

 ところが、湯上がり直後に加え、身体を温める泉質の良さ。保温性もバッチリ。まだポカポカしている。そして真冬のため、暖房もかなり効いていた。

 喋り始めて数分で、滝のような汗がしたたり出す。季節は冬。夏とは違い着物も厚手な分、さらに暑い。もう、汗みずくである。

 真冬に、夏以上の発汗量だったのは、後にも先にもあれだけだった。

 ひょっとして、お客様には物凄く熱演している奴に見えたかもしれない。

 ……いや、それはないな。

 「こいつ……何らかの病気か?」と勘ぐられるのが関の山だろう。

 いや、もっとすると意地汚く、無理やり直前まで温泉に浸かっていたこと自体、バレていた可能性もある。

 真冬に、なぜかとめどない汗を流しながら落語を喋る男。

 皆さん、さぞ気味が悪かったに違いない。

 まさに“顔汗の至り”(かんがんのいたり)なのであった。

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