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あの夏の夜、前座たちは海を目指した

「エッセイ的な何か」 第15回

 そして夜、自分のアパートに帰宅。

 今となっては考えられないが、僕の部屋は当時エアコンもなかったので、パンツ一丁で扇風機に当たって過ごしていた。暑ちぃぃぃ……。うだるような熱帯夜の中、何気なく携帯電話を見る。

 ん? メールが来ている。小柳兄さんからだ。

 あられもない姿で、おもむろにメールを開いてみると……

 『パンツ一丁でいると風邪引くよ』

 ……ヒ、ヒィィィッ!! どこだ! どこから覗いている! 怖すぎるだろ!!

 密室であるアパートの部屋に、僕一人のはずなのだ。なのに、なぜパンツ一丁であることを知っている! 意味もわからず、ただただこの恐怖メールに怯えるのみであった。

 種明かしをすると、昨日の晩、車中にてパンツ一丁で過ごしていた僕を見て、『パンツ一丁でいると風邪引くよ』とメールしていたらしい。

 その後、そのメールにまったく気がつかなかった僕は、丸一日経った後、一人で家にいる時にこの文言を読み、勝手に恐れおののいていたのだった。

 しかしなぜ、兄さんは僕に直接言わずにメールで伝えようとしたのだろうか。それは今も謎のままである。ちなみに、現在もごく細々と活動を継続している落語芸術協会の温泉同好会『温泉部』は、この時に誕生したのであった。

 ……って、ここまで筆を進めて、全然「前座修行」について書いていないことに気づく。海に行っちゃったこととか書いてるし!

 けど、何だかんだ言って、みんな結構、真面目に前座仕事はこなしていたような気がする。信じてもらえないと思うけど。そんな中で僕たちの、ささやかな、本当に悲しいくらいささやかなレジスタンスだったのかもしれない。

(格好良くまとめようとしているが、ただ単に海に行きたかっただけ)

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