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海水浴は、だいたい思い通りにいかない

「かけはしのしゅんのはなし」 第15回

 人生に矛盾はつきもの。

 時間があるときはお金がなく、お金があるときは時間がない。ただ、身近な先輩方に伺うと「年に一度は家族旅行に出かけている」という方も案外多くいらっしゃいます。

 中には「家族で新幹線に乗って現地入りし、落語会を一つ勤めたあと、そのまま家族で過ごす」という方も。その土地の世話人の方から、家族向けの美味しいお店などを教えていただけるので、とてもありがたいのだそうです。

 我が家には、未就学児が二人いるため、海水浴ができる宿泊施設を探すだけでも一苦労です。プライベートビーチのあるリゾートホテルが理想ですが、そんなところに泊まったら、家族を帰したあと、私は向こう10年間ホテルの行灯部屋(あんどんべや)で居残り労働をするしかありません。

 いろいろ調べてみると、最近は住まなくなった平屋の一軒家をリフォームして、貸し出している宿が多いと知りました。子どもたちが旅行の興奮で騒いでも、周りに何もない一軒家なら気が楽です。素泊まりなので食事はつきませんが、その分、宿泊料金もリーズナブル。日程の都合も良かったため、自然に囲まれた一軒家を予約しました。

 電車に揺られて、房総半島へ向かいます。

 車窓から見える海岸線に、子どもたちは大歓声。最寄り駅からタクシーに乗り、運転手さんに住所を伝えると、車は街並みとは反対の方向へ……。気のせいか、海からどんどん遠ざかっているような気がします。

 山林を抜けた先にぽつんと見えてきた一軒家。ここが今回の宿のようです。周りに何もないとは聞いていましたが、想像以上の「ポツンと一軒家」。

 タクシーを降りると、門の前でオーナーさんが笑顔で迎えてくれました。ハウスマニュアルが書かれた紙と鍵を受け取り、「何かあったらご連絡くださいね」と言い残してオーナーさんは去っていきました。