女性講釈師の歴史をたどる
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第47回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/09/13
新聞に眠っていた女性講釈師・桃井龍女
そして今回、残された記事等から、明治のかなり早い時期に活動をしていた女性講釈師を見つけることができた。明治8年(1875年)10月27日の読売新聞の次の記事である(文中、適宜、読みやすいように句読点を付した)。
此頃桃井龍女といふ講釋師が出来ましたが、夫に付て少し世間の女中方に上る事があるからよくお聞なさい。兎角女は男ばかりを頼みにして世を送りますゆゑ、亭主のいふ事は無理なことでも立て置ねばなりませんが、是といふも自分の働きで世を渡ることが出来ないせゑだから仕方がありません。何も女だとて手足が一本少ないといふのでもなく、世渡りの出来る道具は皆備つて有るに、それを働らかせぬから男の厄介に成つて、ヘエヘエいはねばならぬゆゑ、なんでも此龍女のやうに其道具を働らかせて、獨で世渡りをすれば、男ばかりを頼みにするにも及ばず、無理をいはれてヘエヘエいふにも及ばず、そこで男女同権といふ事も出来るから獨立をする様にお心掛なさい。 浅草芳川生
この桃井龍女(ももいりゅうじょ)という講釈師の経歴がまたわからない。文の中身は講釈についてではなく、当時の女性の独立や男女同権問題にあると言え、そういう見方をすれば、その正体は先に挙げた「講演師」に近いのかも知れない。
一方で、明治期に松林伯圓(二代目)が「新聞講談」や、当時の社会や政治についての講談を読んで話題を呼んだということ。江戸から明治へと時代が代わり、講談という芸そのものが形態を変えていったということを考慮すれば、実際に釈場に上がって、新種講談を読んだことも考えられる。
こうして新聞、雑誌に目を通していくと、同時代に活躍し、注目を浴びた女義太夫などについては、それに関する記事をたびたび見掛けるものの、講談に関しては、明治期となると先に挙げた本荘幽蘭に尽きてしまい、最初に記したように、昭和以前の女性講釈師の姿はなかなか見えてこない。
やはり、女性講釈師の確固とした登場は、昭和40年~50年代以降となるのか。そのあたりも含めて、次月以降も続くだろう今後のインタビューから、回答が見つけられればと思っている。
いささか青臭い表現ではあるが、様々な芸風や講談への取り組みで、現代の講談界の支えとなっている女性講釈師が、昨今のジェンダーレスの時代に、「女性」、ひいては「女流」という冠が取れるくらいに、今後ますます活躍を見せていく様もまた追っていきたいと思っている。その時にまた、新しい講談史や講釈師史が語られるのではないか。それが現段階での結論としたら、無責任であろうか(この項終わり)。
(文中、敬称略)

▼瀧口雅仁 X
- 書名 : 問題の女 本荘幽蘭伝
- 著者 : 平山亜佐子
- 出版社 : 平凡社
- 書店発売日 :2021年10月
- ISBN : 9784582838640
- 判型・ページ数 : 四六判・342ページ
- 定価 : 3,080円(本体2,800円+税)
(了)
こちらもどうぞ(昭和54年3月入門の神田陽子先生へのインタビュー)
―― 瀧口雅仁「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」連載一覧
いま読まれています!
「二藍の文箱」 第18回
破門のこと、初高座のこと
~師匠から初めて教わった『道灌』を今は自分の弟子へ。破門を越えてつながる芸の命
三遊亭 司
2026/11/02
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第19回
怒らないでね♡
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/11/03
「テーマをもらえば考えます」 第15回
煙突こわい
~懐かしい銭湯の記憶から、国民的アニメの陰謀へ。煙突ひとつで妄想が止まらない!
三遊亭 天どん
2026/10/31
「二藍の文箱」 第1回
入門前夜
~神様わたしに落語を授けてくださりありがとう
三遊亭 司
2025/06/02
「マクラになるかも知れない話」 第十五回
寄席演芸、前から見るか後ろから見るか
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/10/28
「二藍の文箱」 第11回
弟子の目玉焼きと師匠の粥
~藝の土台となるものは
三遊亭 司
2026/04/02
「二藍の文箱」 第9回
寄席、そちらとこちら
~寄席の客席と楽屋は、やさしさにあふれている
三遊亭 司
2026/02/02
「すずめのさえずり」 第十五回
線路は続くよどこまでも
~乗り換えを重ね、知らない町へ。青春18きっぷで巡る、落語家の自由で気ままな鉄道旅!
古今亭 志ん雀
2026/10/27
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第18回
〈書評〉 ここからが面白くなってくるわけでございますがッ ポンコツ弟子の上方講談修業戦記(玉田玉山 著)
~うつに苦しんだ青年が講談の世界へ。人生を変えた笑いと芸の力を描いた一冊!
杉江 松恋
2026/10/29
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「二藍の文箱」 第18回
破門のこと、初高座のこと
~師匠から初めて教わった『道灌』を今は自分の弟子へ。破門を越えてつながる芸の命
三遊亭 司
2026/11/02
「マクラになるかも知れない話」 第十五回
寄席演芸、前から見るか後ろから見るか
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/10/28
「テーマをもらえば考えます」 第15回
煙突こわい
~懐かしい銭湯の記憶から、国民的アニメの陰謀へ。煙突ひとつで妄想が止まらない!
三遊亭 天どん
2026/10/31
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第18回
〈書評〉 ここからが面白くなってくるわけでございますがッ ポンコツ弟子の上方講談修業戦記(玉田玉山 著)
~うつに苦しんだ青年が講談の世界へ。人生を変えた笑いと芸の力を描いた一冊!
杉江 松恋
2026/10/29
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第19回
怒らないでね♡
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/11/03
鈴々舎馬風一門 入門物語 第1回
ドンといけ美馬 (前編)
~運命のいたずらで落研に
鈴々舎 美馬
2025/05/01
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第16回
天国からの「それ、おもろいわ!」
~あの人がくれた優しさを、笑いに変えて生きる
服部 拓也
2026/10/30
「すずめのさえずり」 第十五回
線路は続くよどこまでも
~乗り換えを重ね、知らない町へ。青春18きっぷで巡る、落語家の自由で気ままな鉄道旅!
古今亭 志ん雀
2026/10/27
鈴々舎馬風一門 入門物語 第2回
ドンといけ美馬 (後編)
~一度は諦めた落語の世界
鈴々舎 美馬
2025/05/02
「令和らくご改造計画」
第十五話 「キモノの呪い」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/10/24
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「二藍の文箱」 第18回
破門のこと、初高座のこと
~師匠から初めて教わった『道灌』を今は自分の弟子へ。破門を越えてつながる芸の命
三遊亭 司
2026/11/02
「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第14回
恩返し
~師匠から頂いた「佑輔」という名前は、今も進む道を照らしてくれる
古今亭 佑輔
2026/10/05
「講談最前線」 第29回
2026年10月の最前線 【前編】 (田辺いちか、真打昇進記者会見 / 宝井琴調、池袋演芸場で初主任)
~田辺いちか先生が真打昇進! 師匠への感謝と芸への愛情が詰まった記者会見の様子をお届け!!
瀧口 雅仁
2026/10/21
「令和らくご改造計画」
第十五話 「キモノの呪い」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/10/24
「くだらな観音菩薩」 第18回
羅怙羅尊者
~浪曲女子との共演から生まれた新たな夢と、仏様が教えてくれる心の優しさ。笑いの向こうに、芸人の胸の内が見えるコラム
林家 きく麿
2026/10/16
「マクラになるかも知れない話」 第十五回
寄席演芸、前から見るか後ろから見るか
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/10/28
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第48回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/15
「お恐れながら申し上げます」 第14回
噺家の衣替えの話
~落語家の衣替え、いちばん大変なのは何? 高座の裏側にある意外な日常を大公開!
入船亭 扇太
2026/10/11
「浪曲案内 連続読み」 第14回
ゴーゴー浪曲太陽傳
~東京・お茶の水にある「スカイルーム太陽」。マスターの笑顔が照らす、浪曲と人情の輪
東家 一太郎
2026/10/18
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第13回
「継続は力なり」ではない
~僕を待っていた、悲しい結末。“計画倒れ人生”を笑い飛ばす愉快な実話エッセイ!?
桂 三四郎
2026/09/29
「令和らくご改造計画」
第十四話 「踊る金持ちピエロ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/09/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第17回
演芸ファンがほしかったスマホアプリを作りました ――「ご贔屓手帖」ができるまで
~ファンの小さな困りごとから生まれたアプリの物語
シン・道楽亭
2026/09/09
「座布団の片隅から」 第17回
好楽
~祝・傘寿! タフすぎる三遊亭好楽師匠の宴
三遊亭 好二郎
2026/09/07
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第十七回
四段目、 そば清、 愛宕山
~初心者でも楽しめる、オチがもっと面白くなる落語入門
林家 はな平
2026/09/06
「艶やかな不安の光沢」 第4回
N氏の碑から浪江の海まで
~長崎の碧い海から、忘れられない故郷の海へ。喪失と希望のロードムービーのようなエッセイ
林家 彦三
2026/09/04
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第17回
ありがとう失言、待っているよ暴言
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/09/03
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25
