一合目 ~日本酒飲みの生い立ち
「伯知の日本酒漫遊記 ~酒は“釈”薬の長」
- 講談
松林 伯知
2025/07/22
ニセ下戸、楽屋で日本酒を語る
もとより我慢忍耐の修行の身、「日本酒は飲めずとも仕方ないぞ」と思っていたある一日。
高座後に楽屋でノセ物の缶ビールをあけてご機嫌に酒盛りを始めたのは、橘ノ圓(たちばなのまどか)師匠。お茶係だった自分は、コップやおつまみを師匠のもとへ運んでいったのだが、その時、圓師匠がふと何を思ったのか急に、「真紅(しんく、筆者の前座名)、酒は飲むのか?」と尋ねてきたのである。
普段、ニセ下戸をしていたのだから「飲めないんです~」と答えればいいのだが、あんまり美味しそうに酒を飲む圓師匠を見ていたからか、この時はなぜか「ビールは飲まないんですが、日本酒は飲みます」と、つい本音を語ってしまった。
すると師匠はオッ!という顔をしたあと、「じゃあ、饅頭で酒は飲めるか?」と尋ねてきた。
日頃より、「日本酒は塩辛いものに合わせるだけじゃない、日本酒の甘みと旨みは甘味そのものにも寄り添うのだ!」と信じて和菓子や果物とも合わせて飲んでいたので、「はい、飲めます!」と正直に答えたところ、「そうか! じゃあ真紅は本物の酒飲みだな!」と師匠は満足気に言ってくれた。
この時の「本物の酒飲みだな!」の言葉が妙に嬉しく頭に残り、次第に「ビール党に遠慮してわざわざ飲めない振りをするのも勿体ないよなあ」と感じるようになったのである。
とりあえず日本酒! 全国漫遊の旅
日本酒が好きなら、好きと正々堂々主張すればよいのでは? 「とりあえずビール!」が許されるなら、「とりあえず日本酒!」も認められてもよいはずだ!
そのためには「こいつは本当に日本酒が好きなんだな」と周りのみんなに思ってもらえるような説得力が必要だと考え、日本酒の資格を取りにいき、酒蔵を巡り、歴史を学び……さらなる日本酒の深淵へとにハマっていったわけなのである。
長々と、日本酒との出会いからハマるまでを語ってきたが、とにもかくにも、とりあえず日本酒! これが当たり前に許される日を迎えるため、さらなる見聞と知識を求め、全国日本酒漫遊の旅を致します。
果たしてどんな発見があるか、乞うご期待!
※余談:日本酒問答のあとも顔を真っ赤にししつつ、缶ビールを飲み続けていた圓師匠、今度は何やらマジマジと私の顔を見て「いや~、こうやって見ると、真紅は実に良い女だなあ~」。これを聞いた周りの師匠方が一斉に、「圓師匠! そういうことはね、酒を飲む前に言うもんですよ!」とツッコんだという……。
(毎月1日頃、掲載予定)
―― 松林伯知『伯知の日本酒漫遊記 ~酒は“釈”薬の長』シリーズ連載一覧
いま読まれています!
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
「艶やかな不安の光沢」 第3回
とめどない嘘のつくろい
~人はなぜ物語を作るのか。その答えが、夏の暖簾の向こうにある
林家 彦三
2026/06/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第4回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/27
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第5回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/28
「お恐れながら申し上げます」 第10回
謝楽祭の話
~祭の前の幸福な妄想
入船亭 扇太
2026/06/11
「二藍の文箱」 第13回
地図にない街、地図にない店
~京都、新宿、上野、浅草、池袋。師匠と行った名店の記憶
三遊亭 司
2026/06/02
「噺家渡世の余生な噺」 第6回
“施設長X”の献身
~架空の介護施設を舞台にした超短編小説
柳家 小志ん
2025/10/14
シリーズ「思い出の味」 第1回
21900のいただきます
~師匠との食卓
三遊亭 司
2025/05/13
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
月刊「浪曲つれづれ」 第14回
2026年6月のつれづれ(東家千春の躍動、三門綾の奮闘、天中軒すみれの研鑽/浪曲陰陽師・第二弾)
~新しい時代の息吹がここにある
杉江 松恋
2026/06/09
「お恐れながら申し上げます」 第10回
謝楽祭の話
~祭の前の幸福な妄想
入船亭 扇太
2026/06/11
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
「艶やかな不安の光沢」 第3回
とめどない嘘のつくろい
~人はなぜ物語を作るのか。その答えが、夏の暖簾の向こうにある
林家 彦三
2026/06/12
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
「朝橘目線」 第14回
我と来て 遊べや母を 呼ぶ娘
~娘と出かけた文学館で、再会したのは自分の中の少年でした
三遊亭 朝橘
2026/06/08
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第14回
ウケるごとに極まっていくその美貌
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/06/03
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
シリーズ「思い出の味」 第6回
茶色いうどん
~自分の未来を見つめる8歳の少年
三遊亭 ごはんつぶ
2025/06/25
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第38回
新しい響きを持つ講談への挑戦 神田おりびあ(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/05/30
「二藍の文箱」 第13回
地図にない街、地図にない店
~京都、新宿、上野、浅草、池袋。師匠と行った名店の記憶
三遊亭 司
2026/06/02
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第14回
ウケるごとに極まっていくその美貌
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/06/03
「くだらな観音菩薩」 第13回
願成就院の毘沙門天
~運慶が作った仏像に心が震えた、きく麿師匠。その一方で…
林家 きく麿
2026/05/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
シリーズ「思い出の味」 第19回
雪のココア
~内弟子時代に憧れた甘い味
柳家 わさび
2026/01/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第7回
世間せまないか?
~落語家を多数輩出する片田舎、神戸の垂水
桂 三四郎
2026/02/01
編集部のオススメ
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第13回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.3
~橋本さん亡き後に立ちはだかった超大型の壁
シン・道楽亭
2026/05/10
「座布団の片隅から」 第13回
声優
~話題の人気アニメ『あかね噺』で声優デビューさせていただきました!
三遊亭 好二郎
2026/05/07
「ずいひつかつどお」 第10回
なぽりたんといっしょ
~つまり、ナポリタンはボヘミアン・ラプソディなのである
立川 談寛
2026/05/04
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
「二藍の文箱」 第12回
午後の逡巡
~その街に息づいた食堂で、ひとり手酌もまた愉し
三遊亭 司
2026/05/02
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25