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第十一話 「塀の中」

「令和らくご改造計画」

#2

 そんなことを考えながら、例によって楽屋の隅で頭を抱えていると、ふと思った……。

 AIを使えないだろうか。

 近年はAIがメールを書き、資料を作り、それこそ、スケジュールを整理する時代である。落語家専用のAIがあれば、出演料の相場、業界の慣習、寄席や落語会特有のやり取り、そういったものを学習させることで、ある程度の事務作業を代行できるのではないか。

 そうなれば、落語家たちはもっと落語に集中できる。そして、オンラインなどでの発信にも時間を使えるようになるかもしれない。

 そう考えた時に、僕の脳裏に一人の顔が浮かんだ。

 ――算用亭でん吉(さんようていでんきち)。

 「AI落語メカウマ事件」「オチログ事件」と、これまでに数々の騒動を起こしてきた前座である。だが、その技術力だけは本物だ。彼なら、ひょっとすると「落語家用AI」を作れるかもしれない。

 そう思い、近くにいた前座会長の長亭いちばん(ちょうていいちばん)くんに聞いてみた。

 「ねえ、でん吉くんって今どこにいるの?」

 すると、いちばんくんは少し困ったような顔をした。

 「ああ、でん吉は……お勤め中です」
 「お勤め?」

 僕は首を傾げた。

 「……というと、師匠のお使いか何か?」

 すると彼は静かに言った。

 「いえ。刑務所です」

 僕はしばらく意味が分からなかった。

 「……刑務所? 慰問の落語会?」
 「いえ、収監です」

 「え、捕まったってこと? なんで?」
 「さあ」

 「さあって、なんだよ」
 「そこまでは知りませんよ。プライベートですから」

 雑な情報提供である。プライベートとかじゃあないだろ。だが、どうやら本当に刑務所にいるらしい。

 ちなみに我々の楽屋では『前座には人権がない』と言われている。

 ところがよく調べてみると、前座にも本当は人権があったらしく、それが判明した結果、でん吉は無事逮捕されたのである。世の中、何が幸いするか分からない。

 とはいえ、刑務所にいるならAI開発は難しいだろう。しかし会いに行けば、意見くらいは聞けるかもしれない。

 そう思い、僕は面会へ向かった。